破折ファイル(その1)

何ヶ月も治療に通っているのに痛みが止まらず来院された患者さんの下顎6番のケースです。

レントゲンを撮ると近心根に破折ファイルがあります。CTを撮影しました。ファイルの破折は医療ミスではありません。細心の注意を払っても起きうる事故です。ゼロにはできません。

抜歯の選択も含めて状況を説明したところ、根管治療を希望されたので着手しました。

ファイルは上の写真の二つ縦に並んでいる上側の根管の中にあります。ところが下に写っている根管に肉芽が見えました。赤いものが見えています。

根尖が破壊されており出血してきます。痛みの原因はこの根管のような気がします。だとしたらわざわざ破折ファイルを除去する必要は無いので、まずはこの根管をターゲットに治療することにしました。症状の消失が無ければ改めてファイルの除去をすることにします。

ファイルを除去せずに治療成果が出た場合の患者利益は二つあります。
一つ目は根管の削除を少なくできることです。除去の難易度はファイルが見えるか見えないかで大きく変わります。このケースでは根管を削除して可視化する必要があるのである程度の削除量は必要です。可視化できない破折ファイルは私には除去不能だと思います(未経験)。
そして二つ目は治療費を抑えることができるということです。といっても保険治療と比較すればずっと高額ですが当院では破折ファイルの除去は5万円をチャージしますのでその分のご負担は減るわけです。

結局このケースではファイルの除去を行うことになりましたが、その様子はまた後日アップします。

破折ファイル(その2)

総義歯(その2)

一回目の印象から作った模型です。下顎には色々落書きをしています。

上顎の後縁の二つの丸印は口蓋小窩というランドマークです。

下顎。

この模型からこのような精密印象用のトレーを作成します。

咬み合わせを採る物のように見えますが、これが精密印象用のトレーです。開口印象(口を開けて型を採る)では取っ手のようなものが付くのですがこれは閉口印象(口を閉じて型を採る)ためのトレーです。条件が良ければ簡単な咬み合わせも一緒に採得します。

総義歯(その1)

総義歯(その1)

私は大学を卒業した後、総義歯の医局に残っていました。総義歯の臨床は歯を削ったり抜いたりしないので患者さんにマイナスが少ない治療だから、そこから歯科医師としてスタートするのが良いと思ったのです。失敗したら最初からやり直せる。それは間違ってはいないのですがそんな甘いものでも無いわけですね。

総義歯の制作過程を順を追って書いていこうと思います。保険診療ではありません。

色々な方法を組み合わせて自分の必勝パターンを作り上げることが総義歯臨床の面白さです。

さてこのケースです。上顎はイージーケースです。下顎は顎堤(顎の骨)が減ってしまってボリュームがありませんから簡単ではありません。

上顎のスナップ印象(精密印象をする前段階の印象)。トレー(枠)の選択が重要です。上顎はCOEというメーカーの日の丸トレーという総義歯専用のトレーを使うことが多いです。日の丸トレーは日本人の上顎には良いのですが、下顎にはあまり適合しません。下顎はシュライネマーカートレーが合います。それ以外にリムロックトレーを使うこともあります。保険診療ではこれが最終印象になります。

下顎です。

フレームカットバックトレーという特殊なトレー(枠)を使って口を閉じた状態で行います。印象材はシリンジを使って口腔内にデリバリーされます。トレーには硬さの違う印象材を盛っておきます。

一回目のアポイントでは診査と治療説明でしたから、今回のこれは二回目のアポイントです。ここから技工作業をするのですが、精密印象を終えて咬合器に模型を付着するまでは私自身が作業をします。そこに総義歯のエッセンスが沢山あって外注技工の当院ではそうせざるを得ないのです。保険診療ではとてもそんなことは無理ですので私が技工作業にかかわることはありません。

続きます。