ウオーキングブリーチ(変色歯の漂白)

ずいぶん前にぶつけて神経が死んでしまってその後だんだん色が変わってしまったというケースです。こういう場合は安易にセラミックで被せるという治療法を選んでしまうのはお奨めしません。神経の治療をした際に裏から開けた穴から再度アプローチし漂白を行います。これをウオーキングブリーチといいます。ホワイトニングとは全く違う方法です。下の画像は一週間ごとの変化です。一枚目が着手前ですから3週間でここまで回復したわけです。

大事なのは漂白の際に従来使われていた過酸化水素水を使わないことです。これを使うと歯根が溶けてなくなってしまう可能性があります。何年か前にShimon Friedman先生の講義で教わりました。ウオーキングブリーチでネットで検索すると残念ながら今でも間違った方法が書かれていることが多いです。

まず裏側に詰めてあるレジンを除去します。これが苦労します。歯とレジンの境界が解りづらいからです。レジンを取り切らないと薬効が期待できませんからこれは重要です。下図の黒い部分にレジンが詰まっていましたが、本来ならこの半分以下の削除で神経の治療は可能です。こういった見えない部分が歯の寿命を左右します。

動画です。内部のセメントや取り残した歯髄、そして充填物を確実に取り切ることが大事です。そしてくどいようですが過酸化水素水を使わないことです。

歯石除去とマイクロスコープ

他の部位の治療をしていたのですがちょっと時間が余ったので簡単な歯石除去をしました。この程度の除去なら顕微鏡を使わないでルーペで行うことも多いです。

動画の前半の倍率が顕微鏡の最低の倍率ですが、ルーペだともうちょっと拡大されて見えます。しかし顕微鏡を使うと治療の動画をその場で患者さんに見せることができるのが非常に大きなメリットです。殆どの患者さんがモニタに釘付けになります。

治療によりますがその日の治療が終わった後に5分から10分程度で説明を行っています。言葉で説明する60分よりずっと解りやすいと思います。

どのタイミングで治療に介入するか?

下の前歯のむし歯。これは治療が必要ですが下の写真の赤丸の小さなむし歯は治療すべきでしょうか? 基本的には必要ないと考えます。解りづらいかも知れませんが上の画像と下の画像は同じ部位です。

ただ今回は着手しました。動画を見れば解ると思いますが、ここを最小限の削除で治療できるチャンスだからです。なおかつこの治療は殆どマイナス要因がありません。取れてしまうことは考えられませんし摩耗することも殆ど無いでしょう。その日に治療の予定はしていませんでしたから、もちろんその辺は患者さんには説明して納得の上です。

長いお付き合いの患者さんなのでここは甘えて、説明はラバーダム下で患者さんは喋れない状態でした。しかも半分寝ていました(笑)。通常は治療の変更は治療を中断して行っていますからご安心を。説明の時間を充分に取ることができるのも自由診療の大きなメリットだと考えています。