下顎7番樋状根のリトリートメント

下顎7番樋状根のリトリートメント。一年ほど通院治療しているのに治らないということで転院来院されました。


CT像

髄床底付近に小さなパーフォレーションがありました。根管内は大量に切削されており、根尖のガッタパーチャとシーラーを除去すると、根尖孔は大きく破壊されていました。いわゆるコンプロマイズド症例です。

二回目の治療で根管充填。こういう場合は根尖で出血させてMTAで根管充填するのが効果的だというのが最近の知見です。

MTAは精製水ではなく、リン酸緩衝生理食塩水で練和します。リン酸がハイドロキシアパタイトの生成に有利に作用するそうです。

私が削ったわけではありませんが、これだけ大きく削ってあると操作性が極悪のMTAでの根管充填も嘘のようにやりやすいです。勿論過剰な切削は破折の危険性を高めます。あくまでも既に削ってあった根管です。

 

根管充填後のレントゲン。カットしてしまいました。

後は経過を診ていきます。何かトラブルが出れば次にやるのは外科的根管治療です。この歯の場合は意図的再植術の適応となります。一度抜いて悪いところを切除して元に戻すという治療法です。

Pro Root WMTAで根管充填して一週間後。触った感じではなんとなくですが、精製水で練った時より良く硬化しているような気がしました。レジンでコアを作って非外科的根管治療の終了です。

 

 

 

 

 

 

歯根破折のある7番の経過

下顎の7番です。サイナストラクトがあり咬合痛があるので治療に着手しました。
歯根破折でした。サイナストラクトが消えません。抜歯を提案しましたが、痛みが消えて噛めるようになったのでと、保存を希望されました。

 

根充後。

 

3年後。サイナストラクトは消失しています。違和感もありません。何故こうなったのか解りません。いつまで安定した状態が続くのかも全く予想はできません。予後に責任は持たないという説明の元に、患者さんの意思決定を尊重しましたが、時間もお金も無駄にする可能性の高い治療です。はたしてそれが治療といえるのかと問われれば、返す言葉はありません。
破折した根の感染根管治療はこの症例でしかしかやったことはありません。通常は抜歯するか、抜歯を拒否されれば治療をしないでそのままにします。ですのでこれを読んで、破折歯根を保存できるかも知れないと期待はしないで下さい。殆ど確実に失敗します(私の場合)。
破折しているかどうかはクラウンを除去してみないと解らないこともあるので、着手する前に、治療開始後破折が確認された場合はその時点で治療を打ち切り抜歯に移行する旨を伝えています。

 

 

もしこの先この歯を抜歯することになったら、抜去歯を切断して観察するつもりです。

 

 

 

 

 

三種類の三根管

上顎6番。長期にわたって何の違和感も無く、レントゲンでも異常は認めなかったので根管治療の必要は無いと診断してレジンでコアを築きました。勿論ラバーダム下です。当初は何の問題も無かったのですが、最近になって打診痛が出てきてしまいました。まだ仮歯の状態です。

最終補綴物が入る前だったので、むしろ幸運です。このブログでも根管治療のことをよく書いているので、私を根管治療に積極的な歯科医師だと思われるでしょうが、そんなことは全くなく着手するにはかなり慎重です。何でも無かった歯を(そんなことはないと思いますが)レントゲンを見て治療されて、それから痛みが出て最終的には抜くしか無いと言われたということで来院される方は少なくないです。そういう場合は今まで治療していた歯科医師にとっても患者さんにとっても非常にストレスになります。

さて、治療動画です。3根管ですが、未処置、石灰化で開かない、ガッタパーチャで根充済みと、1本の歯で3種類の根管を持っています。

感染している感じが希薄なので(汚くないし臭くもない)少し変な感じなのですが、教科書通りにやるしかありません。