光学印象(デジタル印象)の歯肉圧排

当院がイントラオーラルスキャナー(IOS)に依る光学印象を始めてもう15年くらいになると思います。その頃は非常に珍しい機器でした。普及率1%無かったと思います。イノベーター理論でいえば間違いなくイノベータだったと思います。マイクロスコープも確か普及率3%以下と言われていた頃ですからこれもイノベーターですね。CTはアーリーアダプターだと思います。ど田舎の完全自由診療というのはスーパーイノベーターです。単に珍しいだけとも言う😅。

ここからは専門的になるので無視してください。
というわけで光学印象なんですが当時のセレックは(少なくとも私にとっては)直接歯を撮影する印象は無理でした。あの当時本当に直接法で印象できるんだろうかとかなり疑いの目を持っていました。直接法の方が精度が高いとメーカーは言っていました。でも歯肉縁下の場合、圧排してパウダー掛けるとマージン消えるんですよ。どうやっても無理でした。ですので試行錯誤の結果行き着いたのはアナログ印象して模型にしてそれをスキャンする方法でした。間接法と言います。

その時代から十数年を経てスキャナは進歩しました。今はこのように圧排して印象しています。圧排糸は多くの場合抜きません。抜いた方が鮮明なマージンが見えるのですがちょっとでも出血させるとアウトだからです。マイクロスコープでマージン全周が見えれば光学印象も可能だということです。結構強めに圧排してますが今のところそれが問題になったことはありません。 B.O.P.T.やBTAを学んだ今、ガム模型の必要性は薄れました。

歯科治療は事前に全てを予測するのは難しい

こんなデジタルシミュレーションをしてみてクラウンを外してみたら歯肉の中にコア材がはみ出していて、それを除去したらコアの根元に気泡があったので気泡を追ってみたらどんどん内部で広がっていき、結局ファイバーコアを除去することになりすると内部が汚くて結局根管治療になってしまったという、事前に全てを予測するのは難しいというお話しです。

歯肉縁下のデジタルスキャン

デジタルスキャンに関してずいぶん前にはこんなことを考えていました。

最近は80%くらいはデジタルスキャンのみでカバーできるようになっています。それがその歯にとって初めての修復処置であれば、ほぼアナログ印象なしでいけると思います。ただクラウンの被せ直しのように既に削られていた歯の場合はそうはいかないことが多くなります。すべての歯科治療に於いて再治療は初めての治療の何倍も難しくなります。難しくなれば当然成功率も低くなります。最も効率的なのは一回目の治療に最善を尽くすことです。

不適合なセラミッククラウンのやり直しのケース。歯肉の中深く削ってあって歯肉には強い炎症があり腫れていました。なんとか歯肉をコントロールしましたがデジタルスキャンは最初から諦めて、ダブルコードを挿入して塩化アルミニウムペーストも使ってシリコン印象をしました。

その後スキャンしたのが下の画像です。

思ったより撮れてました(採れてたと書くべきなのかな?)。その気でやればデジタルだけで行けたかも知れません。数年前とは違ってやれるものなら全てデジタルでやりたいと今は思うようになりました。少数歯の修復ならアナログに勝ると実感しているからです。

下の写真はセット直後。左右の歯肉ラインが不揃いですが、気にするというご希望はありません。セメントアウト直後なので少し出血しています。モノリシックジルコニアですが細かいディティールもかなり表現できるようになってきています。全ては歯科技工士の技術で私が何かやってるわけではありません。私は正確な型取りと情報を技工所に伝えているだけです。
正面からだとストロボの影響で見えづらいので側方からの画像を露出を変えて載せておきます。マメロンも行けそう。