インプラントを再セット

インプラントがカクカクするので診て欲しいという主訴でした。当院での治療ではありません。インプラントのメーカーは何十社もあってそれぞれ規格が違うので対応に困ることがあるのですが、幸い前医が知り合いだったので上手く対応できました。

インプラントはスクリューで固定するタイプと、セメントで接着するタイプがあるのですが、セメントで接着する場合は仮着といって何かトラブルがあった時に外せる程度の接着力のセメントを使用します。しかしこれが経験上いざ外そうとしてもまず外れません。今回のトラブルはこのタイプのインプラントで、上手く外せれば中のネジを増し締めするだけなのですが、どうしても外れないので上から穴を開けてネジにアクセスするという方法をとるしかありませんでした。スクリュー固定のタイプですとネジ穴が開いているので簡単にアクセスできます。実物を見れば簡単な仕組みなのですが、文章だと解りづらいですね。詳しくはここに書いてあります。

うまく削って穴を開けることができてネジに到達できたのですが、当院のインプラント用のドライバーがネジ穴にフィットしません。結局、後日前医から機材を送ってもらって対応しました。JIS規格のようなものをインプラントメーカーの間で最初に決めておかなかったことでこうなってしまったのでしょうが、困ったものです。

 

セットして穴をレジンで埋めた状態。色が合っていませんが全く見えないところなので問題ありません。

インプラントの印象

ボーンレベルインプラントの印象です。写真を撮り忘れたので模型上で説明します。

ヒーリングアバットメント
ヒーリングアバットメントを外してインプラントが見える状態
インプレッションコーピングというジグを嵌めたところ

ここからは実際の口腔内写真。インプレッションコーピングをネジ止めした状態でその上から印象します。

ちゃんと嵌まっているかどうかをレントゲンで確認したところ。このステップは重要です。
シリコン印象
作業模型

インプラントの印象は普通の印象と違ってパーツを組み上げていくような作業です。

セット。真ん中に空いている穴はネジ穴です。

穴を封鎖したところ。色はそれなりです。臼歯部ではそれほど気にならないと思いますので強度を優先します。フルジルコニアです。

ブリッジかインプラントか?

左下5番の欠損。両隣が既に被せてあった状態で、しかもやり直しが必要だったのでブリッジで補綴する予定で銀色のクラウンを外しました。手前側は既に仮歯になっています。

外して中身をマイクロスコープで観察すると破折線を発見してしまいました。病変も無く症状も無いのですが将来トラブルが出る可能性は高くなります。ちょっとブレた見にくい画像ですが、赤丸の中が破折線です。

この歯にトラブルが出るということは、繋がっているブリッジごとダメになるということですから患者さんには大きな不利益が生じます。しかし破折線が有るからといって無症状の歯を抜歯するというのは、正しいのかどうかは解りませんが私はやりたくありません。治療計画を立て直して5番インプラント、467番はそれぞれ単独で補綴するということを提案して、患者さんの了承を得ました。将来トラブルが出てもブリッジになっていなければ単独の歯の処置で済むのです。

どんな選択が正しいのかは先になってみないと解りませんが、この破折線に気づかずに治療を終了し、将来トラブルが出た時に割れてしまったから仕方がないと説明するようなことは無いようにしたいものです。

というわけで、さっそくインプラントを埋入しました。技術的な難しさはこの部位ではブリッジの方が上です。下顎の大臼歯のシリコン印象は大変難しいのです。唾液と舌との戦いになるからです。