外科的廷出と同時に外科的歯内療法(意図的再植術)

このケースです。

歯内療法後に外科的廷出を行ったのですが、抜歯した際に根尖孔外にバイオフィルムが確認できたので、併せて歯根端切除を行いました。根管治療だけでは治癒しなかったかも知れないケースです。

術前

根管治療後をした後の外科処置後

最初から外科処置をすれば良いと思うかも知れませんが、結果的に外科になったとしても通常の根管治療を先行させる必要があります。根管内が汚れたままで根尖だけ封鎖するのは長期的な予後にはマイナスの影響があるとされているからです。

保存か抜歯か?

根尖病変がある上顎4番。

病変の大きさは抜歯の基準ではありません。「根の先の膿」は多くの場合治癒するからです。根が割れている場合。むし歯を削り取ると歯がなくなってしまう場合。重度の歯周病の場合。これらが抜歯の基準になります。
判断が難しいのが、残してもその後長期に機能するかどうかです。治療のオプションにインプラントが登場して以来、更に答えを出すのは難しくなりました。

リスクを抱えて残すより、抜歯してインプラントというのも合理的な判断だと思います。明らかに保存可能な歯を抜歯してインプラントを奨めるなどというレベルの話ではありません。しかし当院を選んでくださる患者さんは、リスクを取ってでも何とか残したいという希望の方が殆どです。またそういう希望に添える医院であろうと思っています。

麻酔下で歯肉切除を行い、軟化象牙質を染色液を何度も使って除去して保存してみようと診断するまでに60分以上は掛けています。

根管治療の後、エキストリュージョン、あるいは外科的廷出が必要です。

 

メタルセラミッククラウンで補綴した前歯の外科的歯内療法

術前。スクリューピンを除去し根管治療を行いました。

根管治療後、メタルセラミクスで補綴しました。隣の歯と連結しています。上の画像は治療3年後のレントゲンです。

サイナストラクトができています。再発です。補綴物には問題がありませんし、やれるだけのことはすでにやってあるわけですから再根管治療しても無駄ですので、歯根端切除術を提案し了承していただきました。切り札です。

この処置の敵はなんと言っても出血です。見えなければ顕微鏡治療の意味がありません。うまくコントロールできました。

縫合終了時。
一週間後に糸を抜きました。今回は珍しく術後に痛みがあったそうです。

術中の動画はこちらにあります。見たくない方もいらっしゃるでしょうから、いつものように直接ここに貼り付けるのは控えます。

追記 18ヶ月後の状態はこちら。