クラックのある樋状根の感染根管治療(その1)

CT撮影の前に可能な限り金属を外しておきます。金属はCTにアーチファクトというノイズを乗せるのです。

マイクロスコープ像。青い線で囲んだところがクラック。ヒビです。こういった再治療の画像では何度も書いていますが明らかに削り過ぎです。削れば歯は薄くなり強度は落ちて割れやすくなります。

ここまででこの日の治療を終ます。治療後この画像をお見せして充分な時間を掛けて状況をご説明し、次回の予約までの間によく考えて治療を続行するか抜歯するかを決めて頂きます。クラックの状況から歯内療法自体はおそらく成功すると思われますが、歯根の破折のリスクは消すことはできません。破折線が歯冠の頂上から根尖まで繋がっている場合は治療不能を宣言しますが、このように部分的な破折線についてははっきりした基準は私の中にもありません。

続きます。

根尖の病変

術前

1年後。病変は消えているように見えます。

この度奥の歯の治療のためにCTを撮影しましたが病変は確認できませんでした。

口腔顔面痛を治す

歯が痛いのに歯医者に行ってもどこも悪くないと言われた。けれども痛みが続いている。そんな患者さんや、診断がつかずに困っている歯科医はこの本をご一読ください。歯科の専門書ではありませんから一般の方にもとても解りやすく書かれています。この分野を学んだことが無い歯科医師(多いと思います)にとっても良書だと思います。Amazonで購入できます。

当院に根管治療をご希望で来院される方の多くは、他院で治療中で痛みが止まらないという方です。その原因が歯にあれば大抵は治りますが(100%ではない)、歯に原因が無い痛みは歯の治療では治すことができません。ですから、歯のせいなのか、歯のせいでは無いのかを見極める診断能力は重要です。両方が混ざっている病態もあります。

口腔顔面痛の主な治療方法は薬物療法なのですが、痛み止めとして抗うつ薬を使用するなど、一般的な歯科医師が扱うことができるものではありません。私も残念ながら治療はできません。したがって治療は専門医に委ねることになります。専門医をお探しの方は日本口腔顔面痛学会の「専門医、認定医のいる施設」のページで探すと良いと思います。

つい最近ですが、日本口腔顔面痛学会会員限定でオンラインでセミナーが公開されていました。数年前に同じようなコンテンツのセミナーを受講していますが、アーカイブされていたので繰り返し見ることができるのはありがたいです。こういった座学のセミナーはこれからは家に居て学べるネット配信が主流になるのでしょう。特に地方在住の者にとってはありがたいことです。欠点といえば会場の空気から刺激を受けるということができないことくらいです。