ミリングデンチャー

最近はあまり見かけなくなりましたが、部分入れ歯を支える装置にパラレルミリングという精密な治療方があります。言葉で説明するのは難しいのですが歯に被せ物をして、その被せ物に溝を掘っておいて、その溝に嵌まるような構造を入れ歯側に作っておいてはめ込みます。基本的にはバネのようなものはないので審美的で緩みも無く違和感も少ないとされています。歯科医師のテクニックよりも技工士さんのテクニックが大きくウエイトを占めます。今回はこの義歯の再製を依頼されました。

上の写真が口の中の歯に彫られた溝。本来はこのクラウンは最終的な義歯が入るまでは装着されないものなのですが、今回はこの装着された状態から義歯を作ることになるので、これを精密印象することになります。

反対側にもミリングされた歯があったのですが、トラブルで抜歯になり1本はマグネットが入っています。したがってこちら側は通常の義歯のようなバネに維持を求めることになります。ですので純粋なミリングデンチャーにはなりません。この状態の印象をどれほど精密に行っても本来の制作過程に則ったミリングデンチャーのようなフィットを得ることは難しいので、通常の義歯のような維持装置の助けを保険として掛けておく必要があるのです。

ところでそもそもこのパラレルミリング義歯は、残存歯に形成された平行な軸面によって支える構造なのですが、下の画像の赤丸の歯はミリングしてある歯ではありませんから平行性はありません。そこでエナメル質の範囲内でこの歯を削って平行な面を作ることにします。ガイドプレーンと言います。

その際に平行を見るのにスキャンした3Dデータは便利でした。全体を俯瞰して回転もすることができるからです。

くりかえしましますが、本来のパラレルミリングデンチャーはとても精密なのではバネは要らないのですが、このケースでは再製なのでそこまで精密に作るのは不可能ですのでバネを使わざるを得ませんでした。マグネットも使用していますが、その部分は強度を確保する為に金属で咬む面を作っています。

そもそもは大学卒業後は総入れ歯の医局に残って勉強していました。いつのまにか神経の治療とかむし歯の治療をマイクロスコープを使って行うことに特化してきましたが、実は入れ歯の治療は引き出しもいっぱい持っていて結構得意なんですよ。

前歯部金属床義歯

ホームページに掲載していたかなり古いケースです。書き換えのためこちらに移行します。

術前

右上の2本をメタルボンド。裏側にはシンギュラムレスト。前歯にクラスプ(バネ)を見せたくないので、工夫します。
だからといって、ノンクラスプ義歯はやりません。ノンクラスプデンチャーがセットされた患者さんを何人か診たことがありますが、私は否定的で作ったことも作ろうとしたこともありません。

義歯の審美性

ホームページに掲載していた10年以上前のかなり古いケースです。書き換えのためこちらに移行します。

口元が老けて見える。上の歯が見えないという主訴です。全体の咬み合わせが低く、上顎前歯の位置に問題があります。

今まで使っていた義歯に材料を盛り足して、使用していただきながら適正な咬み合わせの高さと前歯の位置を探っていきます。盛り上げた部分が分かりづらいので青線で囲みました。

修正した義歯を新しい義歯に再現して完成。