セラミッククラウンを外したらファイバーポストの周りにむし歯が残っていた

タイトルのまんまです。このケース、セラミッククラウンの咬合面(咬む面、上のところ)に穴が開いていたので外したんですがむし歯がありました。被せるにしろ詰めるにしろむし歯は除去しておくのが基本です。特に神経が無い歯ではマストです。

幸い部分的な処置で済みました。

ファイバーポストを除去するのは大変です

殆どの場合、感染根管治療ではなんらかの除去が必要です。被せ物を外して土台を除去し根充剤を取り除いて根管内を清潔にします。もっとも難しいのは破折器具の除去とされていますが私はファイバーポストの除去もかなり難易度は高いと思っています。とくにキッチリ処置されたファイバーポストの除去にはとても時間が掛かってしまいます。大雑把に歯も削って除去すると最悪の場合は歯に穴を開けてしまいます(パーフォレーション)。たとえパーフォレーションを起こさなくても歯が薄くなれば折れてしまうリスクが高くなります。今回はそれが4本です。CTの画像だとファイバーポストはあまりよく見えません。ですので術前の覚悟ができていませんでした。覚悟があっても時短にはなりませんが・・・

金属の土台はやり方が決まっているのでそれに従って振動を与えれば苦労なく外すことが可能です。大抵はポロッと外れてきます。ファイバーポストには(私が知らないだけかも知れませんが)そういった方法がありません。チマチマ削り取るしかないのです。

4本のファイバーポストを除去して根充剤(ガッタパーチャ)に到達したのは治療を開始してから90分くらい経過していました。余計な削除は一切行っていないと思います。これはマイクロスコープ無しではちょっと難しいのではないかと思います。

後ろに引っ込んでいる前歯を前に出す

真ん中から二番目の歯が後ろに引っ込んでいるのを矯正無しで前に出す。これを可能にするBTAテクニックという手法があるのですがいちどレジンでシミュレーションしてみるのが良いと開発者の坪田先生にご助言を頂きました。

歯肉を切除してそこにコンポジットレジンを盛り上げてみました。そして患者さんはその結果に満足してしまいました。BTAでは歯肉と補綴物が緊密に接してシールドされた状態になるのですが直接口の中でレジンを盛り上げた基底面をそこまでコントロールするのは至難の業です。ですのでこの方法はBTAの邪道です。しかし術後の歯肉に炎症像はありませんでした。レジンはジャイオマーです。
BTAはマージン形態が重要なのですが後日行った形態修正と研磨の際にアウターマージンはやはり粗造なので削って歯冠とフラットな形にしました。この段階で完全にBTAではなくなりました。形態も歯の軸が前に傾くのであまり良いとは言えません。もっと根元が前に出ていた方が自然です。でも患者さんは満足しちゃってます。じゃあこれで良いかとなりました。患者さんは身内のような方なのでテストケースです。経過を追ってみようと思います。