垂直性歯根破折

歯の根に縦にヒビが入ってしまうことを垂直性歯根破折と言います。Vertical Root Fracture 略してV.R.F.です。
基本的にはV.R.F.は抜歯の適応だと思っていますが、臨床的に無症状であった場合は患者さんのお気持ちを考えれば即抜歯とはなかなかいきません。考えられる限りの可能性を説明して一緒に治療方針を決めるという頼りにならない主治医となるわけです、私。

V.R.F.は近心根にありましたがレントゲン上では近心根に病変は無く、遠心根の病変の治療を行う過程で見つかりました。歯肉を剥離してみるとはっきりと破折線は見えますが、深い骨吸収はありません。骨のない部分(骨縁上)の破折線を削ってコンポジットレジンを充填しました。その後歯肉の安定を待ってクラウンを被せました。まったくの自己流の術式でエビデンスなんて全くありませんし、もしかしたらやってもやらなくても同じ治療行為だったのかも知れません。

 

外科的歯内療法の18ヶ月後

このケースです。

下の画像は1年半後。サイナストラクトは消失して違和感もないとのことです。幸い切開線に瘢痕もなく良好な経過をたどっているようです。

外科的歯内療法は滅多にやることがないのですがなかなか難しい処置です。マイクロスコープ下で行うことが更に難易度を高くしているのですが、従来の裸眼で行う歯根端切除術に比べてマイクロスコープを使用したモダンテクニックは成功率に大きな差が出るとされているので、なんとしても使いこなす必要があります。
またこの術式を習得することによる副産物として、通常の治療においてのマイクロスコープの直視できる範囲を大きく広げることができます。