J-Open 根管開放

根の先に膿がたまって圧が高まるとそれが痛みの原因になります。こんな状態です。ならば蓋をしないでダラダラ膿を出しておけば痛みも出なくて安心。というのがJ-Open、根管開放という方法です。それはそうなのですが、膿は細菌感染によって生じているのに開放しておいては細菌が入り放題になってしまうわけです。J-Openは根本的な矛盾を抱えているのです。

とはいえ膿がどんどん出ている状態で密閉してしまっては原因を取り去っていないわけで、改善することを期待はできません。ですからこのようなときは根管内を徹底的に綺麗にして細菌数を可能な限り減らして、膿もできるだけ吸引するようにします。そうすることでどうしようも無く痛くなってしまうとか、腫れてしまったとかいうトラブルは殆どありません。

というわけで痛みが引かずに転院なさってきたケースです。

上が初診時のレントゲン。上の方にはビタペックスというクスリが入っていてその下にはガッタパーチャが残っていました。
下はMTA根充後です。これで治らない場合は外科処置に移行します。
動画で重要なパートは前半のラバーダムをするまでです。マイクロスコープは必要ありません。でもこういった治療を受けた事が無い方が殆どだと思います。保険診療ではここまでの処置に一切の診療報酬が設定されていないからです。

綿栓根充

50年ほど前に根管治療を行ったという上顎第一大臼歯。最近になってサイナストラクトを発見しました。30年ほど前に根管治療はせずに私が補綴処置を行っています。たぶんその前はバケツ冠と呼ばれる、化石のようなクラウンが被っていたような気がします。
3年ほど前に手前の歯の治療を行っていますが、その際には異常は認められませんでした。

CTサジタル像

どうしてこんなに時間をおいて短期間に病変ができたのかは謎ですが(勿論細菌感染ではあるのですが)通常の根管治療を行いました。根管内に脱脂綿を詰めてありました。綿栓根充というもう目にすることは無い方法です。現代の歯内療法ではあり得ない術式ですがそれでも50年経過しています。むやみやたらに歯を削ってレントゲン映えのする根管充填をしたケースと比べてどうでしょう? 考えさせられることではあります。

で、綿栓除去するの大変です(^^;)。たぶん世界中のエンドのセミナーを探しても綿栓根充の除去を教えている所は無いんじゃないでしょうか(笑)。だってそもそものケースが絶滅してゆく運命なのですから。そういう意味では大変貴重な動画です。