抜歯になってしまいました

外れちゃったものを着けてはもらったけどカクカクするし臭うのでなんとかしたい。というご希望です。むし歯が見えています。

X線像。プラスチックのクラウンを外すとコアを取り巻くむし歯が広がっていることが読像できます。歯根は先の方で肥大しています。

クラウンを外して歯根の状態を確認してから治療方針を決定することにしましたが、歯根の挺出を行って保存の可能性もあることをお話ししておきました。

除去後。

コアは接着しておらず挟まっていただけで簡単に外れました。カクカクしていたのはこの所為です。そして歯はボロボロになっています。

染色すると根管の奥の方までダメになっていることが解ります。ここで抜歯を提案しました。度々書いていますが抜歯には抜歯するに足る根拠が必要でそれをできる限り写真などを使って説明し納得していただくことが大切だと思っています。ちゃんと納得の上諦めていただく。引導を渡すとも言いますね😎

歯根の肥大があるため抜歯は苦労しました。歯根を割らないと抜けません。抜歯窩にはアテロコラーゲンを入れて縫合しました。抜いた両隣の歯が既に神経を抜いた状態ですし手前の歯は再治療をご希望ですのでこのケースはインプラントではなくブリッジで治すことを提案しました。

デジタル印象が可能なとき

歯肉縁下に形成が及んだ場合はデジタルは難しいと、ことあるごとに書いてきましたが、時には可能なこともあります。圧排糸で歯肉が少し下がってくれて形成限界がどの方向からも(横からでも縦からでも)見える場合にはデジタルだけで印象します。見えているわけですから圧排糸を抜かないで印象します。どの方向からも見えるというのが重要なんじゃないかと私は思っていて、現在のIOSはワンショットで撮っているわけではないので画像の合成をしていますから、情報の連続性が重要なのではないかと勝手に考えているのです。AIがそこをカバーしてはいるのでしょうが理想的には大きな情報量の連続があった方が良いに決まっています。

うちのご老体のCERECですと、なるべく少ないスキャンの枚数で3Dデータを構築するのが理想とされていたため、模型スキャンの際に模型にポイントを彫刻したりしていました。そこをデータの合成の基準点として認識させていたわけです。因みに口の中の直接スキャンは一切行っていませんでした。

デジタルは術者の稚拙な技術をカバーしてはくれません。むしろ術者がデジタルをカバーしなければならないのです。

アナログ印象

デジタルで印象できるケースはアナログでも印象できますが、アナログでできる印象が全てデジタルでできるということはありません。デジタルは写真のようなものなので歯肉の下の(歯肉縁下といいます)印象は苦手です。いろいろ工夫してやる方法もありますがそんな苦労をするよりシリコンでアナログ印象した方が確実です。と、現時点では思っています。手段の目的化はしません。どちらでも印象が可能ならデジタルを使います。効率が良いからです。

同じ歯肉圧排からの印象。上の画像は本気で採ろうと思ってデジタル印象したわけではないのですが、これでは使い物にはなりません。下がアナログ印象です。エッジが立った良い印象だと思います。