CAD/CAM冠

突然ですがCAD/CAM冠という呼び方は保険用語なのでしょうが変だと思っています。CADとはComputer Aided DesignでCAMとはComputer Aided Manufacturingのことです。要するに制作方法のことです。ならば従来のメタルクラウンはロストワックス冠と呼ぶべきです。どうでも良いですが(苦笑)。 後で気づきましたが、フルキャストクラウンという呼び方がありました。

セラミックインレーが破折したので再治療です。ダイレクトボンディングにするつもりで治療を開始しましたが、遠心隣接面のマージンの真ん中辺りが凹んでいるので断念しました。このマージンをダイレクトボンディングで仕上げるのは難しいです。
セレックでインレーに計画変更したものの今度はミリング中にインレーが半分に割れました。ミリング中に破折するようだと口腔内でも再び破折するリスクが高いので、フルクラウンに変更しました。最初からそう計画すれば治療時間は短縮できたのでしょうが、最小の削除量で済ませることにプライオリティーをおいていますから仕方ありません。

遠心面以外は歯冠の半分程度の位置までしか削っていませんが(歯肉縁上マージン)、透明度が高いリューサイト系ガラスセラミックだと案外色は合ってしまいます。動画の最後にセット後の写真が出ますが、左から二番目が今回治療した歯です。

この手の補綴物は特殊なセメントで接着するのですが、はみ出した接着剤の除去が大変です。時間も掛かります。非常に硬く強固に接着していてしかも歯となかなか見分けが付きません。接着はここがもっとも難しいところだと思います。裸眼では無理だと思います。

デジタルデンティストリー

連休初日はデジタルデンティストリーのセミナーに参加してきました。デジタル関連のセミナーに参加するのは10年ぶりです。CAD/CAMに興味があるわけではないのですが、IOS(Appleじゃないですよ。口腔内スキャナです)に最近思うことがあるのです。

それなりに私でも話しについて行けました。基本の基本は私がデジタルをスタートした時代とそう大きくは変わっていないようです。ずっと言い続けてきた光学印象の限界は、未来永劫変わることはありません。
それでもひたすら考え続ける歯科医師がいて、例えばIOS(Appleじゃないですよ。口腔内スキャナです(二度目))の欠点を補正するアイディアは感動ものでした。道具は使いこなしてナンボのものです。取説どおりに使っている限りは大したことはできません。

情報では今年中に日本のメーカーがIOS(Appleじゃないですよ。口腔内スキャナです(三度目))を発売することが決まっており、それはつまり保険に導入されるということであり、CAD/CAM冠はメタルクラウンより報酬が高いですから雪崩を打つように歯科医院に広がることが予想されます。そして・・・・・・

下の写真は当院でデジタルデンティストリーを開始した当初の10年前の症例です。

セレックの間接法

猫も杓子もCAD/CAMな昨今ですが光学スキャンといってカメラで歯を撮影してそのデータからクラウンなどを削り出す直接法という方法は当院では行っていません。機械が古いからなのかもしれませんが満足な結果が得られる確率が高くないからです。

ではどうやっているかというと通常の印象をとって、模型を作ってそれをスキャンするという方法を採っています。これを間接法といいます。

これがスキャン用の特殊な石膏で作った模型です。この石膏が非常に使いづらいのですが私の知る限りこれしかないので仕方なく使っています。石膏を練るときはバキュームミキサーという機械が必須です。減圧しながら練ることによって気泡のない模型を作ることが可能になります。

深い歯肉縁下の形成が必要な場合や、咬合がシビアなケースにはセレックは向いていません。印象の範囲はこの程度で印象材も寒天+アルジネートです。この組み合わせでしっかり印象できるようなケースがセレックの適応です。

上の模型をこのように調整します。トリミングといいます。両隣の歯に穴を掘ってあります。

咬み合わせを記録したものを模型に乗せて更にスキャンします。

最初のスキャンとこのスキャンを重ね合わせる作業をセレックのソフトウエアが行うのですが、セレックの画像認識を助けるためのマーキングポイントという訳です。理論的にははまん丸ではない方が良いのですがその所為で失敗するということはほぼありません。エッジは立たせておきます。

設計を終えたところ

削り出したセラミックにグレーズという処理を行って模型に戻したところ。適合検査はブルーシリコーンで行います。横から見ると隣接面のトリミングがよく見えます。
咬合調整は実際に歯に接着してから行います。これだけは事前にチェックする方法がありません。中心咬合位は殆ど問題は出ませんが、側方運動時の干渉には注意する必要があります。

セット後

このブログは道具自慢的な要素があることは認めつつも(汗)、道具は使いこなしてこそのもので、それは購入して使い込んで工夫していくしかありません。セレック3に関してはほぼやり尽くした感があるのでもう操作で迷うことはほぼありません。現行の機種は使ったことがないので詳細は分かりませんが操作性は格段に良くなり、より広範囲な補綴にも対応できるようです。ただ最終的にできあがったもの(ただしセレック3ではブリッジや連続冠は作れません)が飛躍的に良くなっているのかについては疑問です。デジタルカメラはどんどん新しくなりました。誰にでも良い写真が簡単に撮れるようになったのは確かですが(それはそれでとても重要)、上手に撮影された写真を見比べてみて大きな違いは私には分かりません。トンチンカンな比較かもしれませんが……。

親しい友人が最新式のセレックを導入したので、機会を作って実験してみようかと思っています。結果に大きな差があったら全てを撤回して土下座します(大汗)。

なお、木田歯科医院は4月から自由診療専門医院となります。保険での治療は行いません。