パーフォレーションがあって保存を諦めた初めてのケース

他院で再根管治療をしたけれど抜歯を奨められて当院に転院来院されました。初診時のレントゲン。根尖病変があり根管内には破折ファイル。中央付近でパーフォレーションが強く疑われます。所謂コンプロマイズドなケースです。そして遠心舌側根(Radix Entomolaris)の存在も疑われます。

治療をご希望になったので2回目の来院でCTを撮影しました。CTは色々な情報を伝えてくれるのですが、最終的には直接見てみて判断します。

動画をご覧ください。歯冠部の歯髄が入っていた空洞部分(歯髄腔)の底(髄床底)に穴が開いています(パーフォレーション)。当ブログにも何度も登場しているパーフォレーションですがここまで大きいのは初めてでした。閉鎖は可能ですが問題はその後の歯の寿命です。根を分割して残すという手もありますがそこまでやると治療費はインプラントよりずっと高額になります。骨にずいぶんダメージがある状態でインプラントは私の手に余るので、ご希望なら他院を紹介するとお伝えし、当院での治療は終了です。一番大切なことは患者利益を考えることです。

 

前歯の根管治療の仮歯

他院にて再根管治療を始めて半年ほど経過したが、何度か腫れてしまって抜歯の宣告をされた歯の治療です。レントゲンに根尖病変が写っています。単純な根管なのでCTは撮りませんでした。

初診時の状態。

直接コンポジットレジンで仮歯を作ります。

歯が根だけ残っている状態での根管治療は周囲からの漏洩を遮断する為に「隔壁」と呼ばれる堤防のようなものを作る必要があります。奥歯の場合には隔壁だけで良いのですが、前歯の場合にはこのように見た目もある程度考えます。治療の度に外せる仮歯は根管治療に於いては肝心の漏洩の遮断という機能が無い為意味がありません。歯内療法の目的は根尖病変の予防と治療なのですが、病変の原因は細菌です。口の中は細菌だらけなのです。

 

J-Open 根管開放

根の先に膿がたまって圧が高まるとそれが痛みの原因になります。こんな状態です。ならば蓋をしないでダラダラ膿を出しておけば痛みも出なくて安心。というのがJ-Open、根管開放という方法です。それはそうなのですが、膿は細菌感染によって生じているのに開放しておいては細菌が入り放題になってしまうわけです。J-Openは根本的な矛盾を抱えているのです。

とはいえ膿がどんどん出ている状態で密閉してしまっては原因を取り去っていないわけで、改善することを期待はできません。ですからこのようなときは根管内を徹底的に綺麗にして細菌数を可能な限り減らして、膿もできるだけ吸引するようにします。そうすることでどうしようも無く痛くなってしまうとか、腫れてしまったとかいうトラブルは殆どありません。

というわけで痛みが引かずに転院なさってきたケースです。

上が初診時のレントゲン。上の方にはビタペックスというクスリが入っていてその下にはガッタパーチャが残っていました。
下はMTA根充後です。これで治らない場合は外科処置に移行します。
動画で重要なパートは前半のラバーダムをするまでです。マイクロスコープは必要ありません。でもこういった治療を受けた事が無い方が殆どだと思います。保険診療ではここまでの処置に一切の診療報酬が設定されていないからです。