コンポジットレジンの除去は大変です。

上顎7番の感染根管治療です。神経の無い歯の治療ですね。

この歯は神経を抜いた後に被せること無くコンポジットレジンを充填してありました。青い部分がそうです。これを除去して根の中にアクセスするのですがこれが非常に大変です。ガーガー削れば一緒に歯も削ってしまうし、方向を誤れば穴を開けてしまいます(パーフォレーション)。
ここにレジンを詰めるのは理にかなっているのですが、下の3分の1位は歯と全く違う色を使った方が後々トラブルがあった場合に対応しやすいと思うのです。そういうカラーのレジンってあるのかな?

どのくらい少しずつ削っているのかが解るように、動画は速度だけは上げてありますがカット割はしてありません。こういう治療はヘトヘトに疲れます。根管治療の回数は少ないほど良いとされていますが、こういったケースを一回で終えるのは私にはちょっと厳しいです。

差し歯が折れた❗❗

このように歯冠を失った前歯の根管治療の際の隔壁は、仮歯の役割も必要になります。下の図のような差し歯の形の仮歯は簡単に細菌感染を起こすので禁忌とされています。

中心に白く見えるのがレジンのコアでその更に真ん中にあるのがファイバーポストです。周辺のむし歯を削ってコアを除去して、コンポジットレジンで仮歯を直接作ります。仮歯の裏側には根管治療の為に穴を開けます。これでラバーダム下での治療が可能になります。ここまでが根管治療の肝です。マイクロスコープ云々はこのステップをちゃんと踏んでから語れと・・・

 

Asymptomatic irreversible pulpitis(無症候性不可逆性歯髄炎)

Asymptomatic irreversible pulpitisは日本語だと無症候性不可逆性歯髄炎と訳します。痛くないけど神経は残すことができない状態ということなんでしょうが、最近のトレンドだと消えていく概念のような気がします。私のような市井の歯科医が「気がします」なんていうのはどうでも良いことなのですが・・・

無症状でも大きな穴が開いているとかレントゲンで病変が見えるとか色が変わっているとか、そんなことがあれば診断もつくでしょうし見逃すことも無いと思いますが、今回のこれは本当に偶然見つけたケースです。

この歯の横に詰めたレジンに隙間が空いてきたので治したいとのご希望です。通法通り麻酔をしてラバーダムをしてレジンを除去していくとポコッと穴が開きました。穴の向こうは空洞です。つまり歯髄はありませんでした。ですから病態は「歯髄炎」ではなくて「歯髄壊死」です。

もし治療の依頼が無ければ解らなかったでしょうし、ポコッと穴が開かなければそのままレジンを詰めて治療は終わっていたと思います。もしかしたらそのままでその後も症状は出なかったのかも知れません。

開いた穴を埋めてこの部分の治療を終えて、改めて上から最小限の切削で根管にアクセスして根管充填し、これだけ歯質を残していますからクラウンを被せる必要はないと考え、そのままレジンを詰めて治療を終えました。