サイナストラクトと歯根破折

歯肉にできたニキビのような膨らみ。サイナストラクトといいます。以前はフィステルと呼ばれていました。神経を抜いた後の管(根管)の中の細菌が骨の中に漏れ出て膿がたまり骨を融かして歯肉を突き破って出てきている状態です。根管治療をしない限り治ることはありません。サイナストラクトは原因の歯に繋がっているのでまずはそれを確認します。このケースでは間違えることはまずあり得ませんが、神経を抜いた歯が何本かある場合には必ず行わなければなりません。

赤く塗ったのがそうです。サイナストラクトからガッタパーチャポイントという造影性のあるゴムのような物を差し込んでレントゲン撮影をするのです。これで原因の歯を特定できたので治療説明を行い治療に介入することの意思決定が行われればステップを進めます。

被っていたジルコニアクラウンを除去してCTを撮影します。外さない状態でも撮影は可能ですがX線を通さない物は可能な限り除去しておいた方が画像にノイズが乗らないのです。

上の二次元のレントゲンでは明確には見えなかった病変がはっきり確認できます。おそらくパーフォレーションがありレッジがあります。前医は善意を持って一生懸命治療をしていたのはレントゲン写真からヒシヒシと伝わってくるのですが残念ながらなすべきことを根本的に間違っているという不幸です。

最近よく思うのですがレジンのコアは白ではなくて何らかの色を付けて欲しいと思います。歯と同色だと除去が難しいのです。ある程度取れたところで残念ながら歯根の破折を確認しました。サイナストラクトの位置などからある程度予測はしていましたが確定診断は今回は破折線が確認できるまではつきませんでした。しかし抜歯するという意思決定はこの破折線によって迷うことなく行うことができました。この時点でその日の治療は終了し次回は抜歯となります。

治療に介入するには正当性が必要でむし歯に関しても全てのケースで治療する必要はありません。抜歯となれば尚更のことで事を急いてはいけません。

 

クラックのある樋状根の感染根管治療(その4・ 5ヶ月経過)

このケースです。被せていたセレッククラウンが欠けてしまったので作り直しです。被せ物が欠けるのは歯根に掛かる力をかわすことができる(ような気がする)のでこれはある意味想定内です。当院で使っているセレック用のマテリアルのリューサイト系ガラスセラミックスの破折強度はやはりジルコニアなどに比べると劣っています。

このレントゲンだけではなんとも言えませんが、病変は少なくとも悪化はしていないように見えます。思いっきり贔屓目に見れば病変は無くなっています。勿論不快症状はありません。

術前(3年ほど前)
術直前のCT
根充後
五ヶ月後

何か症状があればCTを撮ることもありますが、ただ単に経過を見るためだけのために撮影することは今のところ私はしていません。また病変の縮小や治癒を確認してから被せるということもしていません。根管治療が終わって痛みが消えていればすぐに被せてしまっています。

根尖が大きく開いた大きな病変のある前歯の感染根管治療

動画の途中で根管の中から出てきたのは歯髄結石だと思われます。このような歯の治療は通常の「根っこの治療」とは器具も材料もまったく違います。どの歯科医院でもインプラント治療が可能なわけではなく、どの歯科医院でも矯正治療が可能なわけではないように、どの歯科医院でもこのような根管治療が可能なわけではありません。