上顎6番の口蓋側のサイナストラクト(その2)

このケースです。

サイナストラクトも痛みも消えました。
ガッタパーチャを除去した状態を確認してMTAで根管充填です。

下の写真は術中に撮影したレントゲンです。白く写っているのはラバーダムクランプとフレームです。レントゲンに写らないフレームもあるのですが、私にはちょっと使いづらいのです。

根充後。
根尖病変がある場合、60%(うろ覚え。40%だったかも)に根尖の吸収が有るといわれています。ガッタパーチャはただのゴムのようなものですから接着性も封鎖性も殺菌性も硬組織誘導性もありません。MTAにはその全てがあります。したがって私は感染根管をガッタパーチャで根管充填することはおそらくもうありません。

このケースの根管治療の治療費は約15万円です。

なお、木田歯科医院は4月から自由診療専門医院となります。保険での治療は行いません。

上顎6番の口蓋側のサイナストラクト

上顎6番の口蓋側にできたサイナストラクトです。頰側に出る方が多いのですが前歯でも小臼歯でも口蓋側にも出現します。下顎で舌側に出ることもあります。

上の写真のように(同じ患者さんです)サイナストラクトは大きくなったり小さくなったりを繰り返しますが、自然治癒することはありません。説明の結果、患者さんは治療の意思決定をされました。

インレーを外した状態。真っ黒に汚れていて悪臭がします。この段階でCTの撮影。CTは金属があると像が乱れるのでなるべく金属を外した状態で撮影するようにしています。

口蓋根の根尖に大きな病変があります。病変に沿って上顎洞底が盛り上がっているように見えます。歯性上顎洞炎も疑われますが、幸い鼻症状は無いそうです。

歯性上顎洞炎に関する書籍はあまりありませんが、この本は耳鼻科医が書いたものです。当然と言えば当然なのですが、歯内療法のことはあまり書いてありません。現代の歯内療法を学んだ歯科医師にとっては今回のこのケースは根管治療の適応であり、そう低くない確率で治癒に向かうであろうと考えると思います。

通法に従って破折の有無を確認して隔壁を作ってラバーダムをセットして先ずは口蓋根管の治療に着手しました。

ここまで綺麗になりました。ガッタパーチャポイントを除去するとこれも真っ黒に汚染されていました。ここまでが一回目の治療、約90分でした。

外科的歯内療法(意図的再植術)

この症例です。

サイナストラクトが再発しました。外科処置に移行です。

上顎7番は部位的に歯根端切除の対象にはならないので意図的再植術を選択します。一度抜歯して根尖をカットして抜いた場所に戻します。

根尖孔が黒いのはMTAが見えているからです。プロルートMTAは硬化すると酸化ビスマスのせいで黒くなります。

歯根端をカット。MTAで根充してあるので逆根管充填は必要ありません。周辺の歯質まで黒変しています。黒変を避けたい部位にはビスマスフリーの別のMTAを使う必要があります。

抜歯窩を掻爬。

抜歯窩に戻して縫合固定します。外科という切り札を切ったのでもう次の一手は無くなりました。結果が全てです。良い報告ができることを祈るしかありません。