サイナストラクト

着手時 押すと膿が出てきます。
治療2回目 押しても膿は出てきません。
治療終了時 跡だけ残っています。

これは口内炎ではありません。歯の根にばい菌が入って骨の中に膿がたまってそれが歯茎を破って流れ出しているのです。以前はフィステルと言いましたが現在はサイナストラクトと言います。強い痛みなどの症状は無いことが殆どです。自然に治るということはありませんが、膨らんだりしぼんだりということはあります。通常は1〜2回の感染根管治療で消失します。

サイナストラクトの存在や病変の大きさによってその歯が保存不能という診断は下りません。実際の現場では特に歯内療法に於いては、抜歯の基準は歯科医師の能力によって決まります。抜歯の基準がそれを治療する歯科医師(当然私も含めて)の技術レベルを超えることはないのです。

樋状根のこと

下顎の7番のトラブルは樋状根という特殊な根管形態の場合が多いです。樋状根の出現率は3割程度とされています。
抜髄なら感染さえさせなければ大丈夫だと思いますが、感染根管の再治療はそれなりの道具が無いと難しいと思います。勿論テクニックも。

下の写真が樋状根ですが、「根管」よばれるような管ではないことが解ると思います。

管ならこんなドリルで拡大形成することはある程度は可能ですが、このような溝のようなところにドリルを入れても無駄です。空振りするだけですね。

神経を抜くのはごく一般的に行われる治療ですから簡単に思われるかもしれませんが、実はとても難しい治療なのです。ただ漫然と行ってもある程度は成功するのも確かで、トラブルが出て初めてそれに気がつくということになるのは仕方のないことだと思っています。

MTAでの根管充填

抜髄根管ではガッタパーチャにバイオセラミックス系の根管充填シーラーでシングルポイントで根管充填しています。使用するニッケルチタンファイルのサイズとテーパーに合わせたガッタパーチャを使うのでそれでいいと思っています。そんなに規格通りに合うわけはないのですが(根管の形態は思っている以上に複雑だし、ファイルとガッタパーチャポイントが厳密に規格が合うわけではない)、問題は出ません。

しかし感染根管では根管がすでに大きく削られている場合が多いので、それができません。ガッタパーチャで緊密に詰めるには加温して柔らかくなった状態のガッタパーチャを加圧して行う方法はありますが、緊密と言ってもマクロのレベルです。根管内の感染を完璧に取り除くことはできないので、薬理的な効果も期待したいわけで、再治療の場合はほとんどのケースでMTAでの根管充填を行っています。MTAは長期にわたって殺菌効果があり、象牙質と接着するため漏洩のリスクを大きく減らすことができます。

欠点は、操作性が非常に悪くその後の再治療が殆ど不可能で大変高価なことです。ただしどんな病名で使用可能になるのかは分かりませんが、今後保険に導入されるという噂はあります。