Stepwise Excavation 歯髄温存療法

無症状でも非常に深く進行したむし歯があります。痛みが出ていれば神経の処置をすることが多いと思いますが、ご本人が全く気づいていなかったような場合はなんとか神経を残したいものです。

このケースは完全に感染象牙質を除去すれば高い確率で神経が露出することになると思い、敢えて感染象牙質を残しその上にタンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメントを置いてその上にコンポジットレジン充填を行いました。う蝕治療ガイドラインに沿った治療ということになります。歯肉の下に深く広がったむし歯だったので電気メスで歯肉を除去しています。この状態でラバーダムを掛けるのは不可能だったので尚更歯髄処置は避けたかったのです。

3〜12ヶ月後にリエントリー、つまりまたレジンを外して中を確認してレジンを詰め直します。成功すれば象牙質の硬化が観察されるはずです。

プロルートMTAを使った直接覆髄

ホームページに掲載していた10年以上前のかなり古いケースです。書き換えのためこちらに移行します。

術式は今も変わりませんが、ご覧のようにこの時は保険での治療(全く採算に合いません)という甘えもあってラバーダムを使用していません。この部位でこの処置でラバーダムをしないことは今の当院の治療ではあり得ません。また、プロルートMTAは硬化すると黒くなるので今はこの部位では使用していません。別のMTAを使っています。最終的に被せる場合にはその限りではありません。

さて、上顎小臼歯近心隣接面からの深いムシ歯です。痛みはありません。時々物が詰まるという程度の訴えでした。当時は痛みがあれば神経を抜く治療になることが殆どでした。

カリエスチェックというムシ歯染色液を使って慎重に感染歯質(ムシ歯)を削り取ります。歯髄に近くなったらタービンは使わず小さいナイフのような器具で手指の感覚で削り取っていきます。

歯髄に到達してしまいました。赤く見えるのが歯髄(神経)です。患者さんの年齢やその他をトータルで考えて、これは神経を残す方向で治療を進めることにしました。近日中に痛みが出て結局神経を抜かなくてはならなくなる可能性と、暫くしてから同様に痛くなってくる可能性、そして無症状で歯髄が壊死する可能性を説明し、納得して頂きます。

MTAで露出した神経をカバーします。

コンポジットレジンで更にカバーして光学印象まで済ませて仮封して本日の処置は終了します。現在はレジンの前にコンポマーを入れています。
この削り方はコンサーバティブな修復処置には対応しません。金属で作ったものを従来のセメントで付けてもこの形成では簡単に外れてしまいます。高度な接着操作によって最小限の切削量による修復が可能になるのです。今の私ならこのままコンポジットレジンで仕上げるかも知れません。

セレックで修復

深いむし歯

右に写っているクラウンの隙間がむし歯になっています。

クラウンを外してむし歯を除去したところ。歯肉を電気メスで焼いています。これをレジンで埋めて・・・・

仮歯を入れて経過を診ます。

両隣の歯は残念ですが根管処置が必要でした。根管治療はとても難しいので、できる限り避けたいものです。