神経を抜くのに失敗し強い痛みを訴えていた下顎中切歯の感染根管治療

前回投稿したこのケースです。すっかり痛みは消えていました。あまり強い痛みが続くと慢性痛に移行してしまいなかなか痛みが消えなくなってしまいます。専門的な話になりますが侵害受容性疼痛から神経障害性疼痛に変わってしまいます。ここに解りやすく解説してあります。

さて、このケースでは来院された時には非常に強い痛みを訴えていました。あまりに痛いのでどの歯が痛いのかも解らなくなってきています。ここでも診断はとても重要です。

幸い正しい診断が下せ、治療も奏効して次回のアポイント時には痛みは消えていたので根管充填を終えました。バイオセラミックシーラーでシングルポイントです。要はMTA根充ですね。辛い日々から解放されて目出度し目出度し。

根管を見失ってしまうとリカバリーは難しい

強い痛みのある下顎両中切歯。根管は開放されていました。つまり穴の開いた状態です。そもそも根管の開放は悪手なのですが、膿が出ているわけでもないのにそれをやっても全く意味はありません。
下顎の前歯は1根管と思われがちですが、実は2根管のことが少なくありません。それを疑って治療を始めましたが、根管の中に詰まっている食べかすを洗い流すと削られた方向には根管はありませんでした。幸いパーフォレーションまでには至っておらず、本来の根管を見つけてそこを拡大しました。こういったケースではマイクロスコープが威力を発揮します。本来の根管が見えてしまえばあとは簡単です。これが湾曲根管で見えないところにレッジがあるとずっと難易度は高くなります。

強い痛みと大きな腫れがあり上顎洞粘膜の肥厚がある上顎第二大臼歯の感染根管治療

頬が大きく腫れて強い痛みもあったケースです。基本的に当院は初診で治療に介入することはないのですが、緊急ですので着手しました。このような急性期には麻酔も効きづらいのですがなんとか奏効させてクラウンとメタルコアを除去し歯肉から排膿させてある程度根管を処置した頃には麻酔が切れ始めてしまいました。その時点で説明を含めかなりの時間を費やしていましたので治療はそこまでとしました。鎮痛剤は処方しましたが心配なのでその日の夜にフォローのメールをだすと、すっかり痛みは治まったとのことでホッと胸をなで下ろしたのでした。もちろん根管開放はしませんでした。

このケースでは口蓋根と遠心根は穿通出来ませんでした。CTでは全ての根を取り囲むように病変が広がっていますからどの根が原因だとは全く特定できません。それでも経験からパーフォレーションと特種な形態の近心根に原因があるように思います。ただの勘ですが・・・

近心根からは含気性の組織液の排出がありました。初めての経験です。気体は上顎洞由来としか考えられないのですが不勉強で解りません。上顎洞粘膜の肥厚は確認できます。

とにかく全ての症状は消えました。