歯根破折とサイナストラクト(フィステル)


歯根破折が疑わしいレントゲン写真。歯根全体を取り囲むような透過像は大抵破折しています。


この歯です。青丸の中がサイナストラクト(フィステル)。歯根破折の場合、サイナストラクトは比較的歯冠寄りに出現します。なお出血している部分は麻酔注射によるものです。

しかしこれらのことだけでは破折の確定診断はつきません。破折線の確認が必要です。レントゲンではっきり解ったり、目視で確認できればいいのですが、この症例ではクラウンを外して、スクリューピン(ネジのようなもの)を外して、根充材をある程度除去してやっと破折線が確認できました。その日の治療は30分程度でした。なお、根管内の破折を確認するにはマイクロスコープは私には必須です。


抜歯の際に更に破折したので、なんとなく破折線は見えますが、染色することによってはっきりと見えるようになります。


メチレンブルー染色。横に走る細い線が破折線です。サンプルのために、これは抜歯してから染色しています。抜歯後、説明のために染色して見せることは偶にありますが、治療そのものには関係のない行為です。臨床では口の中で染色します。

次の予約で抜歯しました。いちばん上の写真は抜歯当日のものです。抜歯に要した時間は5分程度です。遠回りの治療になってしまいますが、破折していなければ保存可能ですから必要なステップです。もちろん最初の段階で患者さんが抜歯の意思決定をされれば回り道はしません。
保存できない歯を残すのも、保存できる歯を抜歯するのもどちらも間違いです。重要なのは患者さんの意思決定をサポートすることです。

意思決定(いしけってい、英: decision making)は、人や団体が特定の目標を達成するために、ある状況において複数の代替案から、最善の解を求めようとする人間の認知的行為である。

根管内破折器具除去(その4)

根管内破折器具除去(その3)はこちら。

根充しました。

近心根はイスムスで繋がっていました。なのでレントゲン上では拡大しすぎのように見えますが実際はそうでもないのです。レントゲンの撮影角度に依るものです。勿論抜髄根管に比べれば拡大しています。

治療費は
感染根管治療(3根管)¥100,000
破折ファイル除去   ¥50,000
CT撮影と分析       ¥15,000
別途消費税をいただきます。
コア除去(根管3分の1以下)、隔壁形成、麻酔、レントゲン撮影は無料です。
私は歯内療法の指導医でも認定医でもありません。それでも保険点数の10倍。負担金だと30倍程度にはなります。
その後のクラウンも保険は認められません。
それでもトータルでは抜歯してインプラントにしたり、ブリッジにするよりは安価です。

開かない根管

抜髄根管ではありませんが、感染根管の再治療の場合は根尖孔まで治療できないことが希にあります。「根管が石灰化していて閉鎖していて開かない」と良く聞きますが、それは大抵言い訳です。もしそうなら根尖病変はどうしてできたのでしょう? 本当に閉じているなら細菌は根尖に到達できないはずです。治療で到達できないのは殆どの場合歯科医にテクニックがないからです。実際にはそんなに単純ではないのですけど・・・


術前。根尖に透過像。サイナストラクトもあります。

 


根尖まで器具が届きません。レントゲンで計測すると2mmくらい根尖の手前です。ですが、サイナストラクトは消失しました。


根充後。当然ですが拡大できた所までしか根充できません。それでもたぶんこの症例では治癒すると思います。サイナストラクトが消えたということは、何らかの原因除去が奏効している可能性があるからです。
それでもダメなら外科処置(マイクロエンドサージェリー)を選択することになります。しかしそれは充分な経過観察の後に行うべきです。