再根管治療は難しい

すでに神経を抜いて治療が終わっていた歯の再治療はとても難しいのです。それに比べればその歯の一回目の根管治療は(大抵は抜随です)やりやすいのですが、当院ではその機会はほぼありません。99%が再治療です。

クラウン(被せ物)を外すのは良いとしてその中身のコア、つまり土台を除去しなければなりません。その際に歯を削ってはいけません。歯を削らずにコアだけ除去します。このときにパーフォレーションといって歯の中に穴が開いているのを発見することがあります。私にはありませんがコアの除去の際に歯を削ると自分でパーフォレーションを起こすこともあり得ます。

次にガッタパーチャという根管に詰まっているゴムのようなものの除去です。これがまたやっかいです。この際も歯を削ってはダメです。

ガッタパーチャ除去したら根管の中の汚物を除去していきます。取り残した歯髄だったり血液だったりがこびりついています。

そして根の先まで綺麗にしていこうとすると途中で器具が進まなくなります。レッジというのですが、本来の根管から横道にそれて器具操作をしてしまうと難易度はとても高くなります。

というフルコースの治療の動画です。根管充填はMTA(Mineral Trioxide Aggregate)を使っています。

 

直接覆髄

このケースです。

結論から書きますが結局露髄(神経が露出すること)してしまいました。もちろんこうなってしまう可能性は充分説明しています。

最初から抜随していればとっくに治療は終わっているわけですが、ここにきてなお歯髄を温存しようと足掻きます。ダイレクトパルプキャッピング(直接覆髄)です。

露出した歯髄が拡大下で健康そうに見えた上に出血も無かったので、特に薬液処理などはせずに直接BioMTAを厚めに乗せて、その上にセラカルという光硬化型の覆髄剤を乗せて固めて、更にコンポジットレジンを充填しました。痛みは出ませんでした。これで修復が完了ではなくこの後クラウンを被せます。

慢性疼痛

このケースです。

根管治療後二ヶ月経過です。完全に違和感が消えて何でも食べられるという所まではいっていないのですが、ご本人曰く「日常生活にそれほど支障は無い」ということですので次のステップに進むことにしました。
もちろんレントゲンで経過は確認しています。

治療に介入したころはかなり憔悴なさっていたのですが、今は笑いながらその頃を振り返ることができるようになって、歯のことばっかり考えているという生活からは脱却できたそうです。
治療時間の半分以上はお話をしていたように思います。痛みは多様な表現を持っていて、根管の中を診ているだけでは解決できないようなこともあるのです。とはいえ、基本的には歯内療法で解決可能なケースが私の守備範囲です。つまり歯が原因の痛みです。

治療後