根管充填

このケースです。

抜随後は完全に不快症状は消えたそうです。クラックによる歯髄炎は自信を持って確定診断をつけるのはなかなか難しく、治療後の症状の経過でハッキリするということがあります。つまり診断は当たっていました。

2回目の治療でガッタパーチャで根管充填しました。あまり抜随(神経を抜くこと)は私の臨床では多くないのでガッタパーチャでの根管充填もあまりありません。25番の04テーパーのポイントです。

MB2の存在の雰囲気がプンプンしたのですが見つかりませんでした。根管充填まで90分程度でした。

MTAでの根管充填

抜髄根管ではガッタパーチャにバイオセラミックス系の根管充填シーラーでシングルポイントで根管充填しています。使用するニッケルチタンファイルのサイズとテーパーに合わせたガッタパーチャを使うのでそれでいいと思っています。そんなに規格通りに合うわけはないのですが(根管の形態は思っている以上に複雑だし、ファイルとガッタパーチャポイントが厳密に規格が合うわけではない)、問題は出ません。

しかし感染根管では根管がすでに大きく削られている場合が多いので、それができません。ガッタパーチャで緊密に詰めるには加温して柔らかくなった状態のガッタパーチャを加圧して行う方法はありますが、緊密と言ってもマクロのレベルです。根管内の感染を完璧に取り除くことはできないので、薬理的な効果も期待したいわけで、再治療の場合はほとんどのケースでMTAでの根管充填を行っています。MTAは長期にわたって殺菌効果があり、象牙質と接着するため漏洩のリスクを大きく減らすことができます。

欠点は、操作性が非常に悪くその後の再治療が殆ど不可能で大変高価なことです。ただしどんな病名で使用可能になるのかは分かりませんが、今後保険に導入されるという噂はあります。

クラックによる歯髄炎

上顎7番。クラックからの感染と思われる歯髄炎です。症状的には生活歯髄療法(神経の一部を残す治療法)も可能だったのですが感染経路を考えるとリスクがあると考え抜髄しました。40年ほど前の治療だったそうです。ブラボーです! 完全にむし歯を取り除いて精密な治療をすれば長持ちするんです。根本的なところはずっと以前から変わりません。ヒビが入ってしまったのは仕方ありません。

歯髄腔が狭窄しており根管口も細くなっていました。顕微鏡下じゃないと無駄な切削をしない治療は難しいと思います。上顎7番はラバーダムが掛けづらく、掛かってもズレたり外れたりしやすいので、クランプをコンポジットレジンで固定します。これは案外重要なポイントです。とにかく何としてでもラバーダムを掛けないと根管治療は始まりません。