下顎7番の破折ファイル除去

下顎の7番です。根尖外に破折ファイルが飛び出しているようです。前医は治療は無理との診断だったそうですが、それはそれでごく普通の妥当な診断だと思います。蛇足ですがなんと500キロ以上離れた遠方からのご来院でビックリしたのですが、実家がお近くだということでした。それでも通院が大変であることは間違いありませんから、短期集中でアポイントを取りました。自由診療の患者さんのアポイントは複数回をまとめてお取りしています。一回に90分から120分の枠を取るのでそうしないと予約がスムーズに取れないからです。

先ずは「診断的治療」を行います。根管内を観察して治療可能かどうかを診断する作業で、それはレントゲンだけでは判断できないのです。破折していたり軟化象牙質が広がっていたりすれば、治療しても無駄ですので(時間とお金の無駄づかい)着手しません。

幸い破折などはなく、治療することのメリットデメリットを説明した結果、治療をご希望されました。一日おきのアポを3回。これで根管治療を終えるというのが今回のミッションです。

破折ファイル除去にはCTは必須です。ファイルの長さは5mm程です。

隔壁を作ってある程度洗浄したところです。なんとも変な根管系のように見えましたが赤丸の中は前医が除去し切れていないファイバーポストでした。

除去したところ。

これで破折ファイルの頭が見えてきました。それにしても暴力的に根管を削ってあります。歯の治療は内側も外側も最小限の切削で最大の効果が得られるようにすることが重要です。再治療になることは必ずと言って良いほどあるわけで、その際に残っている歯質の量が多いか少ないかは決定的に予後を左右します。

今回は超音波の振動でファイルが緩んだ後にループを使って除去しています。
このように前に倒れているような歯は反射させるミラーの角度が浅くなりマイクロスコープ下のミラーテクニックが大変難しくなります。当然動画も見づらくなって、私の苦労が偲ばれると思います(笑)。

根管内の破折ファイルは必ず除去しなければならないということはありません。何の異常も無いのにわざわざ除去するのは無意味と言うよりマイナスです。いたずらに不安を煽るようなことは本意ではありませんので書き添えておきます。

パーフォレーションリペア(その3)

このケースの続きです。

MTAで根管充填。
気泡が何カ所か入ってしまいました。硬化前ならやり直すのは難しくないのですが、こういった気泡は(無い方がベターでしょうが)問題になることはないのでこれで根管充填まで終了です。

 

 

大きなパーフォレーションがあってサイナストラクトもあり痛みがずっと続いているとなると抜歯を宣告されることが多いと思いますが、現在の歯内療法ではどれも抜歯の基準ではありません。しかしこの治療は保険では認められていません。

 

 

サイナストラクトも消失して違和感も消えています。歯内療法の治療費は15万円程度です。

 

上顎7番MB2(近親頰側第二根管)

上顎大臼歯は三根管だと考えて治療に介入する歯科医師が多いと思いますが、感覚的に言って五割に近親頰側第二根管があります。つまり四根管です。このケースでも神経を抜いてからずっと痛みが続くということでしたが、案の定未処置の根管がありました。

痛みが続くのには原因があります。原因を見つけることができなければ治りません。その原因を除去することができれば、殆どのケースで少なくとも不快症状は消えます。