クラックがある歯をモノリシックジルコニアで治療するのこと

開高健チックなタイトルにしてみました(笑)。

歯が欠けてしまって咬むとその瞬間に痛みが走るとのことです。青い丸の部分が欠けています。

しかし診査の結果、原因は赤い線で囲まれた部分にあるヒビでした。メチレンブルーで染色してみましたが染まっていません。診査方法は長くなるので割愛します。
詰めてあったインレー(なのかな?)を外してむし歯の取り残しを除去して新たにレジンで修復して経過観察。症状が消えたことを確認して全体を削ってセラミッククラウン(モノリシックジルコニア)で被せることになりました。最小限の削除が優先される場合もありますが、大切なのは安定して長く機能することなので、積極的に削ることもあります。この症例ではダイレクトボンディングやインレーでは欠けてまたやり直すという悪循環に陥ることが予見されたのでフルカバー(全部被覆冠)を選択したのです。修復物が欠けるのはまだ良いのですが、歯が割れると最悪の場合は抜歯になってしまいます。

モノリシックジルコニアはまだ自然観を完全には再現し得ないのですが、薄くても丈夫なので歯を削る量を少なくすることができます。この歯は神経がある歯なのでそれは大きな利点です。もちろん患者さんの承諾を得てからの使用になります。本当はゴールドクラウンを薦めたんですがさすがに金歯は断られました。お気持ちは良く理解できますからすんなり引き下がります(笑)。絶対に譲れないこともありますが、患者さんの気持ちにより添うことも大切です。できる限りの情報を提示した後に意思決定を行うのは常に患者さん本人です。

さて接着ですが、ジルコニアではトライボケミカルシリカコーティングという内面処理を行います。具体的にはCoJet Sandという粉を吹き付けます。

このような装置です。技工所でロカテック処理済みでも試適で汚染されるので、チェアーサイドで処理するのが理想です。そしてその後シランカップリング処理を行います。以上、患者さんにはどうでも良い説明でございます(汗)。そもそもこんな道具を持ってる歯科医院の方が少ないと思いますし、これをやらないとすぐに外れちゃうなんてこともないと思います。きっと・・・ 

ついでにど〜でも良いことですがこのシランカップリング剤が歯科用だと異常に高いのです。工業用だと300ml2000円とかで売っているのですが歯科用だと3ml6000円とかで販売されていています。ついでのついでにMTAも大雑把に言えば工業用セメントみたいなものです。MTAは1g1万円くらいです。MTAでテトラポッド作ったら高いんだろうな。

閑話休題
それでは今回のまとめです。小さなクラックが咬合痛の原因であると発見診断できたことで治療をスムーズに終えることができました。
って二行で終わりかよ(^^;)

コンポジットレジンの加熱器・印象材の冷却器

臼歯のダイレクトボンディングは咬合面(歯の上の面。咬み合う面)にこのような山と谷を作っていくのですが、その際にレジンの操作性が重要です。柔らかいものだと凸凹に詰めても固める前に(光を当てるとかたまります)溶けるように平らになってしまいます。硬いレジンだとそういうことは回避できるのですが、こんどは窩洞(削った穴)への馴染みが良くありません。上手く表現できませんがボソボソなのです。

最初は柔らかく、だんだん硬くというのが良いのですが(硬化してはだめです)、そんなことがこれを使うと可能になります。要はヒーターです。硬いレジンも加熱すると柔らかくなるのです。物性は落ちません。

特に冬場には活躍します。と思います。まだ買ったばかりなのでわからない(笑)。

逆に夏場はこれが重宝します。チェアサイドに置ける小型の冷蔵庫です。印象材(型を取る粘土のようなもの)は化学変化で硬化しますから温度が高いとすぐに固まってしまうのです。冷蔵保存の指定のある薬剤などもあります。大きい冷蔵庫でも良いのですがそれだと肉とか魚とかマヨネーズとか入ってそうで台所感が強く出てしまってかっこ悪いのです。っていうか邪魔です(苦笑)。

当院のレジンの動画をご覧になると充填時は黄色い照明に変わりますが、レジンは光で硬化するため硬化しない照明を使う必要があるからです。黄色い光だとなぜ固まらないのかは調べればすぐに解るのでしょうが、必要ない知識なので知りません(笑)。本当はイエローライトは立体感が無くなりとても見づらいので、メーカーには自然光では硬化しないで、別の色の光で硬化するレジンを開発してもらいたいものです。何か理由があってそうしないのかもしれませんが・・・ 
いや、贅沢を言ってはいけませんね。コンポジットレジンが世に出た頃は二つのペーストを練り合わせて硬化を待つという材料だったのです。冷やして時間稼ぎしてました(笑)。

プロビジョナルレストレーション

初診の状態。根管治療を終えてしばらく放置されていたためむし歯が深くまで進んでいました。

電気メスで歯肉を切除し、何度もう蝕検知液で染め出してむし歯を取り切った状態です。この後ファイバーコアを立てて形成。

フォーカスが甘い写真ですが、プロビジョナルレストレーション(ちょっと違うのですが仮歯のようなものです)。後ろのボンヤリしているのもそうです。顕微鏡レベルでの適合が、精密な印象への重要なステップです。