診断が難しかった下顎7番の歯髄壊死(その1)

主訴は時々痛みがある。強く痛むこともあった。ピーク時の2割くらいに痛みは軽くなっていると言うことでした。少し動揺していましたが確定診断はつかず、咬合調整をして少し経過を見させてもらっていました。冷たいものにしみると仰るので確定診断がつかなかったのです。

他の部位を先に治療していましたが、アブセスが出現したので歯髄壊死の確定診断をして治療に着手しました。コンポジットレジンを除去すると近遠心にカリエスはありましたが歯髄壊死に陥るような深いものではなく、またクラックもないので本当に壊死しているのか不安になりましたが(勿論可能性としては説明しています)歯髄腔に達したときに中が空洞だったときはホッとしました。歯髄が生きていれば出血します。

歯髄腔の近心舌側が高位に張り出していて、おそらく以前の治療で前医が髄角(歯髄の角、で解ります?(笑))に近接したのに気づかなかったためだと思われます。矢印の部分です。上のレントゲンを下の写真を見た後で読像すればそうも見えますが、なかなか読み切れません。

最小限の削除で最大の効果を得ることを心がけます。

ところが治療に反応が悪く、通常ならアブセス(膿)はすぐに消えるものなのですがなかなか消退しません。CTを撮影してみたところ思ったより大きな病変があることが解りました。

続きます

パーフォレーションリペア

このケースの続きです。

前回の治療で貼薬した水酸化カルシウムを除去して、洗浄しMTAで塞ぎました。
動画はカットなしで冗長なので再生速度だけ8倍にしてあります。

パーフォレーションはMTAの登場で予知性を持った治療が可能になりました。しかしだからといって起こしてはいけないことに変わりはありません。

歯性上顎洞炎の疑いで耳鼻科からのご紹介

右顔面痛→歯科医院受診→歯には問題は無いと耳鼻科開業医を紹介される→耳鼻科開業医で治療するも寛解せずオペが必要との診断で病院耳鼻科を紹介される→病院耳鼻科から歯性上顎洞炎の疑いがあるとご紹介頂く→歯科的には保存不能と診断する

という経過をたどったケースです。

ヘリカルスキャンのCT画像
内視鏡像

歯性上顎洞炎の疑いは強いのですが、患歯は進行した歯周病で動揺度2。クラウンのマージンから歯根に深いカリエスが進行していました。保存不能です。ですが咬むのには今のところなんの不都合も無いとのことです。

「疑い」ですから疑わしいというだけで100%ではありません。100%なら抜歯すれば上顎洞炎は治癒するのでしょうが、抜歯しても治癒しない場合もあると言うことを説明しておかなければなりません。このステップをちゃんと踏まないとトラブルになったり、そこまで行かなくても「なんでもない歯を抜かれちゃった」と思われてしまうことになります。それはお互いに不幸なことです。


上顎洞炎の原因になっている可能性は高いが、それとは別の理由で治療に耐える歯ではない。

患者さん
どうせダメなら抜いちゃおうかな?


それはそうなんだけど、今回の受診の目的は上顎洞炎だったわけなので、そこはよく考えて決めるべき。耳鼻科医にお返事を書くので相談してください。抜歯すると取り外しの入れ歯になる可能性が高い。

歯を治してほしいという主訴での来院なら少し違う流れになるのでしょうが、こういったケースでは患者さんにあらためて考える時間を持ってもらうことが大切だと考えています。

なお、以前ご紹介いただいたこのケースは経過は良好とのお返事を主治医からいただいております。蓄膿症の原因だから抜歯しか無いと診断された方は、救える可能性がありますからご相談ください。