口腔顔面痛

歯が痛いと来院された方で、原因の歯を特定できないことがあります。
歯科医としては目の前で苦しんでいる患者さんをなんとかしてあげたいと治療に介入したくなりますが、原因が特定できない場合は触れません。触ってはいけないのです。

例えば上の図の中央付近のエメラルドグリーンの部位は、三叉神経節という所ですが、ここに異常があると歯に原因が無くても歯が痛いと感じることがあります。なんとか助けてあげたいという善意から治療に介入すると、健康な歯を削って、神経を抜いて、それでも治らずに抜歯して、それでも治らずに隣の歯を削って・・・。という悪循環に陥ります。無知からくる善意は時として悪意より厄介なのです。その最たるものが放射能の風評被害です。

以下、口腔顔面痛の関連エントリーです。
非歯原性疼痛
神経障害性疼痛

ところで上のイラストは、ヒューマン・アナトミー・アトラスというソフトで書きだしたものですが、患者さんへの説明に解剖図が必要な時にはとても重宝します。ご同業の方には強くお奨めします。これはご自由にスルーできる私からの善意です(真顔)。

 

フェネストレーション

正常な歯は図のように歯根全体が骨に埋まっています。

ところが根尖が図のように骨から飛び出ていることがあります。病気ではありません。これをフェネストレーションと言います。

それ自体は問題ないのですが、この歯に根管治療を施すと、違和感がある、噛めない、痛い、等の不快症状が消えないことがあります。

そうなってしまった場合は通常の歯内療法では治りません。歯根端切除術で骨の外に出ている部分を切除するしかありません。

外科的歯内療法は通常は治らない病変に対して行われる処置ですが、これはそれとは目的が少し違っています。ただし、術式は同じです。動画だと大変な処置のように見えるかも知れませんが、写っている骨の穴の直径は5mm程度です。術後に腫れるようなことも殆どありません。マイクロスコープを使用した外科的歯内療法(マイクロエンドサージェリー)の成功率は90%以上とされています。

フェネストレーションが原因で難治性根尖性歯周炎と診断された症例に対する処置:日本歯科保存学雑誌 / 55 巻 (2012) 1 号

practice

根管治療の練習用にこんな模型が販売されています。透明なので根管内の器具の動きを観察できるのが良い点です。

 

幸い開業医には抜いた歯がありますから、これでも練習できます。下の画像は根管内でファイルを故意に破折させて除去の練習に使ったときのレントゲンです。

こんなふうに撮影できたら、CTがなくても根管に関しては大丈夫なんですけどね。上の写真は上顎小臼歯ですが、複雑な根管形態です。アップです。

破折ファイル除去のトレーニングを受ける前はチャレンジでしたが、今は根管から飛び出してくるファイルのイメージが湧いてきます。