パーフォレーションとサイナストラクトのある上顎前歯コンプロマイズド症例

サイナストラクトがある上顎前歯です。パーフォレーションが強く疑われるレントゲン像です。
根管治療はおそらく成功すると思いますが、問題はその後です。根尖病変を治すのと歯が長期にわたって機能する(長持ちする)のはまた別の問題で、根管治療が成功しても、歯そのものの強度を上げることはできません。それについての説明はとても重要で、その上で患者さんの意思決定を尊重します。費用対効果についてもよく考えていただきます。今回のそれはチャレンジでした。
誤解されないように書いておきますが、どんな症例にもチャレンジするということはありません。根管治療承諾書には結果を保証するものではありませんと明記していますが、さりとて高い確率で結果を出さないと、高いお金を払って治療をしようなんて思う人が居なくなります。

 

ファイバーコア除去の途中です。歯周組織の生物学を全く無視した形態でした。

こんなイメージ(笑)。

 

大部分のコアの除去が終わった画像です。向かって右側にパーフォレーションが疑われますから、少し歯質に厚みのある向かって左側から慎重に除去しています。メタルでもレジンでも何でもそうですが、コアの除去は歯を削らないでコアを選択的に削ります。コアと歯質の境目を狙って削ると、更に歯にダメージを与えることになるからです。
最終的には剥がすように除去します。

動画です。

ここまでの治療時間は約70分でした。

その2に続きます。

 

 

 

 

 

 

根管内で破折したニッケルチタンファイルの除去

 

根管治療中にニッケルチタンファイルを破折させてしまいました。根の中で白く写っているのがそれです。

抜髄根管ならそのまま根管充填をしても問題は無いことが殆どらしいですが(感染させない根管治療をしていなければダメです。殆ど問題が出ないというデータは歯内療法専門医が治療して折れた場合です)、感染根管の治療途中で根管洗浄前だったので除去します。
ファイルの破折は事故なので、リスクをゼロにすることはできません。大事なのは破折したら正直に患者さんに伝えることです。そして感染の可能性が低く痛みなどの症状も無ければ、除去しない方が良い場合もあると思います。

部位は上顎6番の近心頬側根です。遠心にかなり湾曲しており、またニッケルチタンファイルはステンレスファイルに比べて弾力があるため、緩むまで結構苦労しました。ステンレスファイルの方が除去しやすいです。昨今は盛んにニッケルチタンの良いところばかりが取り上げられますが、どんなに優れたトルクコントロールや回転制御を行っても、ステンレスのハンドファイルより遙かに折れやすいです。

動画です。

闇雲に超音波チップを入れて振動させても取れません。ちゃんとしたセオリーがあります。マイクロスコープが無いと無理です。今回は自分で折ったので根管形態を把握しているため必要ありませんでしたが、そうじゃなければCT撮影をしてストラテジーを組み立てる必要があります。そして勿論テクニックも必要です。知識と技術と道具の三つが必要なのです。

 

動画だと大きく見えますが、実際はとても小さいのです。折れた先は3.5ミリでした。

ニッケルチタンファイルは折るのは簡単ですが、取るのは大変です。特にこの症例のように湾曲部で破折して根尖近くまで達していると、除去できる歯科医師はかなり少ないと思います(自慢)。でもまあ、今回のこれはマッチポンプ的ではありますね(汗)。