マイクロスコープの映像記録 その2

その1はこちら

思ったよりパーツが早く届いてこんな形になりしました。鏡筒が少し長くなりました。直視に有利になります。

カメラの取り付けが完了して実際に動かしてみて焦りました。これは大失敗しちゃったかなと…
映像は1秒くらい遅延するし、動画のフレームレートは5fpsしか出ないのです。
今はハードもソフトも色々調整して何とか上手く動きそうでホッとしているところです。
ある程度のパソコンのスキルと、光学機器のイロハが無いと悲しいことになります。
私はMacで使いますが、最新のグラボでギリギリのようです。PCはハイスペックを要求されます。

数日使ってみましたが、ソフトに何カ所かバグがあります。
このカメラの用途としては私の使用目的は特種中の特種のようなので(メーカーも初めてのケースと言っていた)デバッグは難しいかも知れないと思いつつメールをしたら、時間は掛かるかも知れないけどやってくれるそうです。幸い試行錯誤してバグをカバーする方法を見つけたので現状でも不自由はありますが動くようになりました。FinalCutProを使います。

何といってもこのカメラの優れているところは動画の撮影中に物理スイッチで静止画が撮れるところです。ただしこれはMacでだけ機能するようです。メーカーの人も知りませんでした。嬉しい誤算です。

ヘッドが重くなった分、バランスを取るために顕微鏡の動きが重くなってしまいました。カメラ以外にビームスプリッターやCマウントのアダプターが付いたせいです。カメラは軽いのです。仕方がありません。トレードオフです。
ビームスプリッターはプリズムで光軸を分岐させるので、少し顕微鏡像が暗くなってしまいます。これを改善するには現在のハロゲンライトをキセノンに替えるしかないのですが、そこまでやると安いメーカーのマイクロスコープが買える値段になってしまいます。でも欲しい。

上顎7番口蓋根管口

同頬側根
特種な根管の位置です。通常はこの角度で見ると上下に並びますが、これは横に並んでいます。マイクロスコープがないとちょっと発見しづらいと思います。

画像が丸くなっていますが、Cマウントアダプターの画角が可変なので実際の視野に近似させています。顕微鏡ですから視野は丸いのです。従来の画像は丸の中を四角く切り取っていたわけです。モニタには下のように表示されます。この辺は今後どう運用していくか暫く使ってみて決めていこうと思います。

 

 

 

CTG( Connective Tissue Graft )

状態が悪い歯を放置していてその後抜歯になると、周囲の歯肉が大きく陥没してしまうことがあります。こうなってしまうとブリッジの形態が不自然になってしまいます。


陥没してしまっています。

この状態で仮歯を入れるとこんな形になってしまうのです。
ちょっと強調してますが・・・

口蓋の粘膜を開いて、その下にある結合組織(肉)を採取してそれを陥没した部分の歯肉の中に埋め込みます。

採取して縫合を終えたところ。1週間程度で元通りになります。上皮が残っているので治癒が速いのです。ただし上皮が必要な手術もあります。

 

一度では足りなくて二度行いました。なおこの頃はこのような編み込んだ糸を使っていましたが現在は縫合はすべてナイロンのモノフィラメントの糸を使用しています。

まだ少し足りないです。本当は後の吸収を考慮して少し多めにボリュームを確保しておきたいのですが、患者さんも術者ももういいやと共に妥協して(笑)、少し経過を待ってセットしました。
以上、ホームページにも記載されているのですが、先日来院されました。

8年6ヶ月経過。レジン前装冠は艶もなく特にマージン部は吸水して変色してしまっています。積極的に歯肉の下にマージンを持って行きたくないので、経年変化で露出してしまいました。CTGで盛り上げた歯肉は安定しているようです。レジンは炎症を起こしやすいマテリアルなので、歯肉炎気味の肥厚なのかも知れませんが、出血も発赤もないので今のところ臨床上の問題はありません。歯肉に少し瘢痕が残っています。

時々CTGの提案をしていますが、そこまで必要無いと仰る患者さんが殆どです。現在は補綴物が保険外の方にのみ行う治療です。

 

 

石灰化した歯髄


歯髄に達するむし歯です。痛みもありますから神経を抜きます。上顎第一大臼歯ですから通常3根です。

 


赤い線は頰側根の歯髄腔ですが、青い円の中の口蓋根の歯髄腔(神経の入っている根の中の空洞)がよく見えません。

 


抜随すると口蓋根管の中からこんな歯髄が出てきました。生活歯髄です。半分石灰化してます。堅いです。

歯髄の石灰化については諸説あるようですが、これは第三象牙質(病的第二象牙質)なのだろうと思います。専門書にはスイスチーズ様の構造を示すと書かれていますが、スイスチーズの構造を知らない(笑)。

この症例ではこれがスポッと抜けてきたので治療がやりにくくなるという程のものでもなかったのですが、これが根管内に残っていると何故か電気根管長測定器が非常に不安定になります。