上が術前のCT。下が根充後。CTは反対に写ります。
上顎第一大臼歯の根尖病変は近心根に好発します。2根あったり1根でも根管の形態が複雑だからだと思います。私が行う歯内療法は、なにも特別なものではありません。基本通りのベーシックな方法に則っているスタンダードな手法です。ある程度のレベルの歯科医師なら誰でもできる程度の治療なのですが(謙遜(^^;))、これを保険診療で行って採算が取れる歯科医師はたぶんいないと思います。
福島県いわき市にある自由診療専門の歯科医院です。TEL 0246-36-5960
痛くなかったのに根の治療をしたら激痛が・・・
これをフレアアップと言います。ここ10年かそれ以上出ていなかったのですが久しぶりに出てしまいました。前回アップしたMB2のあった歯なのですがメタルコアを除去してある程度の所までの治療はしたもののまだ根管の入り口から2/3程度までしか触っていないので、フレアアップするなんて思いもしませんでした。
統計を取っているわけではないので数字に意味は無いのですが、感覚的には当院での発生率は0.1%も無いと思います。しかし例え確率1000分の1でもそうなってしまったご本人には100%の事なのです。
フレアアップが起きたからといってその歯の予後に悪影響が出ることは無いとされていますからその点では心配は要らないのです。しかしどんなに注意しても起きる不可抗力のような側面もあるのですが、起こしたくないことではあります。
全ての根管治療が成功するわけではありません。このケースの一年後です。
初診時には膿がたまって腫れており痛みもありました。前医では抜歯宣告をされて来院されました。CT画像です。
治療に着手すると近心根(上の画像の左側の根)にはパーフォレーションがあり、遠心根にはヒビが見つかりました。抜歯の選択も説明し、痛みや腫れが取れても長期に安定した状態をキープするのは難しいこともお話ししました。意思決定は患者さんが行います。結果的には歯を残すことを希望されました。
MTAで根充後の画像です。
経過は良好だったのですが約1年後に再発しました。
レントゲンです。コーンカットはお見逃しを(汗)
根尖の病変はまだ残っていますが大分回復方向にあったように見えます。しかしおそらく近心根が割れています。前回の治療でもかなり厳しい状態だったのですからこれをまた再治療する価値はありませんし、私が出来ることはやり尽くしているのでもう一度アプローチしても改善する見込みはありません。したがって私にはこの歯を救う手段は無く抜歯が妥当だとお伝えしました。痛みはそれ程強くは無いので少し考えてみるとのことでした。
治療に入る前には、最善は尽くすけれど成功を保証することは出来ないこと。歯内療法自体が成功してもそれと歯が長期に保存出来るかどうかは別であることなどは説明していますが、それでも術者としてはずっと長持ちしてくれることを祈りながら治療を終えるのです。
最後に「こうなってしまってこの治療をしたことを後悔していますか?」と訊いてみると、そんなことはないと答えてくださいました。
予測のできないことや限界はあるにせよ、患者利益を最優先に自分にできる最善の治療をするということを続けていくしかありません。殆どのケースで経過は良好なのですから。