根管治療を諦めた訳

何度か書いていますが根の膿の大きさは抜歯の理由にはなりません。歯がボロボロの場合は抜歯を奨めます。あとは歯が割れている場合。

下のCT画像の赤い部分はパーフォレーションです。そこから病変が広がっています。でもこれは治せると思います。

問題は残っている歯のボリュームです。下の通常のレントゲンの方が解りやすいです。赤い部分はとても薄くしかもむし歯になっています。むし歯を除去すると殆ど歯が残りません。なんとかできないかともがいてみましたが抜歯をお奨めしました。

3本の歯にまたがった大きな病変のため診断に苦労したケース

根の先に膿がたまってそれが大きいから抜歯しましょうというという診断は間違っています。私の知る限りでは何ミリ以上になったら治せないという文献は無いと思います。やってみないと解らないと私は考えます。

下顎小臼歯2本(4番と5番)第一大臼歯(6番)まで広がった病変です。どの歯が原因なのかを診断するのは非常に難しいです。どの歯も同じような痛みがあり打診などの反応も明確ではありません。4番には生活反応がありません。修復物は非常に歯髄に近くまで及んでいます。怪しいのですが、とは言え歯髄の生死を決定的に診断する術はありません。鎮痛剤はよく効くそうなので非歯原生歯痛の可能性は低いです。

一刻も早く痛みから解放して差し上げたい。なのに診断がつかない。こういったケースはそう多くはないのですがこれは医療者としては辛い。

幸いこの状況を打破できたのは紹介元の歯科医院からご提供いただいた過去のレントゲン写真でした。そこには臨在歯に及ばない5番単独の病変が写っていたのです。

診断がつけば後は治療するだけ。メインのガッタパーチャを抜くと大量の排膿がありました。そして3日後の来院時には全ての症状は消えていました。まだ少し出血もあったのでその日は洗浄をメインに行って3回目の来院で根管充填を終えました。

このまま少し経過を追います。改善しなければ歯内療法外科です。

神経を抜く(抜髄)

たとえむし歯を取り除いた結果、神経が露出してしまっても神経を抜くことは滅多にありません。歯髄保存療法を選択することが多いです。ただし術前に痛みがなかった場合です。痛みがあった場合は神経を残すことは今のところありません。