マイクロエンドサージェリー(動画・早送り)

マイクロエンドサージェリーに使用する道具です。左の孫の手のようなのはリトラクターといいます。動画を見て頂ければ使い方が解ると思いますが、これは大事な器具です。粘膜を押さえながらマイクロスコープの視野を遮らないというリトラクターは、実はあまりありません。まん中辺りのタービンは外科用なのですがヘッドの角度が違うだけではなく、冷却注水の仕方も異なっています。その隣の黒い棒はMTAブロックというもの。その隣はマイクロシザースと受針器。ハサミと縫合する針を掴む道具です。カストロビージョ型といいます。通常の器具は腕や手首で操作しますが、マイクロ器具は指で操作します。大きな動きは顕微鏡の視野から外れてしまいます。タービンの右隣はマイクロミラーです。幅が3ミリ程度で曲げて使うことが可能です。嚢胞腔に挿入して根尖を見るためです。

歯科治療において道具は重要です。道具があっても技術がなければどうしようもないのですが、包丁がなければ料理はできません。弘法筆を選ばずは通用しないのです。

このケースは上顎左2番。
通常の根管治療後3ヶ月ですが、サイナストラクトが消えません。

 

動画は切開も出血も映っています。嫌いな方もいらっしゃるでしょうからここでの表示は控えます。ご覧になりたい方はこちらでどうぞ

非歯原生疼痛

先日受講したセミナーのレポートがありました。
こちらです。

これはマイクロスコープを臨床に導入した頃に治療した症例です。多くの患者さんは他院での治療で改善しないという理由で当院に来院されます。この方も抜髄根充後も疼痛が続くので色々調べて来院されました。歯科治療に対する知識も深く治療の説明も良く理解して下さいました。

術前

術中

根充後

歯内療法によるトラブルは大抵の場合は1〜2回の治療で改善するのですが、この症例では良くなったようでもまた痛み出すことがあるという経過を辿ります。結局スッキリ何の違和感もないというところまでは持って行けず、しかしそれなりに安定したという状況で補綴を終えました。治療回数は5回程度だったと記憶しています。根管治療はいたずらに治療回数を重ねても効果はありません。引っ越しされて、1年程度の経過後に来院されましたがほぼ安定していました。

その頃はまだ非歯原性疼痛に関しての情報は今ほどはなく、私自身も殆ど知識がありませんでしたので簡単にその可能性をお話しして歯科治療を開始しましたが、問診の記憶から、今にして思えばこれは非歯原性疼痛だったように思います。だとしたら治療のファーストチョイスは薬物療法であり、私にできることは専門医の紹介だったのです。

因みに薬物療法には抗うつ薬が使われることがありますが、これはうつ病に対して処方されるのではなく、抗うつ薬が、痛みを伝える神経伝達部位に作用して効果を発揮するからです。その点については誤解されませんように。
とはいえ、当院は院内処方ですので抗うつ薬を持ち合わせていません。また、一般的な歯科医院で抗うつ薬の処方が可能かどうかも解りません。

歯科は殆どの場合診断は全くもって容易なのですが、希にこのようなことがあるのです。先日、別の講習会で歯内療法専門医にその質問をしてみたところ、痛みが引かない根管治療の3割程度(確実な記憶ではありません)はオロフェイシャルペイン、つまり口腔顔面痛だったという答えが返ってきました。歯内療法専門医院ではトラブルをもつ患者さんが殆どでしょうから、一般的な歯科医院よりその確率は高いだろうとは想像していましたが、驚くべき数字でした。傾向として痛みを長期にわたって我慢していた歯髄炎と、外傷による歯髄炎の場合にオロフェイシャルペインに移行する場合が多いような気がするとのお話しでした。

因みに昨日も下顎総義歯の患者さんが、義歯が当たって痛いということで来院されましたが、痛みの原因は三叉神経痛か帯状疱疹後神経痛の可能性が高くその旨ご説明しました。「電気が走るような痛み」は三叉神経痛の特徴的な症状です。また皮膚に触れただけで痛いのは(アロデニアと言います)帯状疱疹後神経痛の症状のひとつです。
義歯が当たって痛いという場合は、咬めば痛いという確実な症状の再現性があります。

根管からの排膿

上顎前歯。歯髄腔を開放すると、大量に排膿してきました。
最短距離で最小の削除量で歯髄腔に到達することが、その後の歯の強度を落とさないために大切です。