長いメタルポストを除去する

このケースは病変は無く再根管治療が必要だったわけではないのですが、メタルコアが歯肉の中ではみ出していてそこの歯肉が不健康になっていた為、除去することになりました。コアの下にはむし歯がありました。
再治療には必ず何らかの除去が必要になります。それをいかに歯にダメージを与えず行うかはその後のその歯の寿命を延ばす為にとても大切になります。健康な歯を極力削らないで除去するようにしなければなりません。その歯を残す為に除去を行うわけですから・・・。

長いメタルポストです。

一切歯を削らないでこのポストだけ削り取ることも可能ですが、それは最終手段でもっと効率の良い除去方法をまずは試します。下の動画のように大抵はこれで上手くいきます。メタルは除去し易いマテリアルです。レジン系のコア剤もせめて根管の中だけでも歯に寄せた色ではなく、赤とか青とかだととずっと除去し易くなるし、ファイバーポストも有色で良いと思うのですが知る限りでは無いようです。

下の画像をクリックすると木田歯科医院のYouTubeの動画をご覧になれます。

前歯の真ん中の隙間を歯を削らないで直接埋める

前歯の真ん中の隙間を埋めるダイレクトボンディング。この方法の最大のメリットは歯を全く削らないということに尽きます。外れてしまっても元に戻るだけです。削ってしまえば外れたらその後はどんどん悪くなってしまいます。他にもやり方はありますが全く何の手も加えていないこの歯を削るのは臆病な私にはちょっと無理です。

矯正治療という方法も勿論ありますが、真ん中の隙間以外はほぼ完璧な歯列と咬合を矯正で複数の歯を移動させて同じレベルで再構成するなんてできるのでしょうか? この綺麗なケーナインガイダンスを担っている犬歯を移動させて今と遜色の無い機能を与えるなんてできるものなのでしょうか? 数十年前に矯正の卒後研修に2年間通った私の感覚としてはそんな繊細なコントロールがワイヤーとブラケットでできるとは思えないのです。ましてアライナーなんて・・・。学んでいない者が想像で書いているようなモノなので読み飛ばしてください。

さて直接詰めるといってもそれなりの準備は必要です。

型をとって模型上で盛り上げます。ここで重要なのはど真ん中を決めることです。デバイダーを使ったり光で透かしたりして慎重に決めます。

これをシリコンで型取りします。ここにレジンを盛って裏打ちを作ることによってその後の治療を格段に確実に進めることができるようになるのです。裏打ちをバックウォールといいます。

私は奥歯のダイレクトボンディングでは色合わせ等に神経を使うようなことはしないのですが、前歯ではそういうわけにはいきません。今回は3色を積層しています。

セメント質剥離

歯の硬組織は、エナメル質、象牙質、セメント質です。セメント質は歯根の周囲を取り囲むような組織で通常は歯肉の下にあるので見えません。

このケース。歯肉が突然腫れてしまって痛いという主訴です。実は直近にダイレクトボンディングを行った歯です。歯周病とは無縁の方でしたので連絡をいただいたときはもしかしたらラバーダムの結紮のフロスを取り残したのではないかと考えて、急遽来院していただきました。

来院していただくと確かに腫れています。フロスは残っていません。痛がっていたので麻酔下で歯肉の検査をするとこの歯だけ深いポケットがありました。ポケットの中を探ると異物を触知します。スケーラーという歯石除去に使う器具を使って掻き出してみました。卵の殻の破片のようなものが出てきました。歯石ではありません。

一週間後の来院では歯肉は大分落ちついていました。マイクロスコープを使ってポケット内を観察すると異物が見えたので、根管治療用の特殊な器具を使って除去しました。下の画像がそれです。

診断はセメント質剥離です。何らかの原因で歯根のセメント質が剥がれてそこに感染が起こっていたようです。歯周病と誤診をしてしまわないように要注意です。さて、はたして剥離したセメント質をすべて除去できたのでしょうか? 経過を追ってもし腫れるようなことが再びあれば歯肉を開いて直視下で除去する必要があると患者さんには伝えました。