綿栓根充

50年ほど前に根管治療を行ったという上顎第一大臼歯。最近になってサイナストラクトを発見しました。30年ほど前に根管治療はせずに私が補綴処置を行っています。たぶんその前はバケツ冠と呼ばれる、化石のようなクラウンが被っていたような気がします。
3年ほど前に手前の歯の治療を行っていますが、その際には異常は認められませんでした。

CTサジタル像

どうしてこんなに時間をおいて短期間に病変ができたのかは謎ですが(勿論細菌感染ではあるのですが)通常の根管治療を行いました。根管内に脱脂綿を詰めてありました。綿栓根充というもう目にすることは無い方法です。現代の歯内療法ではあり得ない術式ですがそれでも50年経過しています。むやみやたらに歯を削ってレントゲン映えのする根管充填をしたケースと比べてどうでしょう? 考えさせられることではあります。

で、綿栓除去するの大変です(^^;)。たぶん世界中のエンドのセミナーを探しても綿栓根充の除去を教えている所は無いんじゃないでしょうか(笑)。だってそもそものケースが絶滅してゆく運命なのですから。そういう意味では大変貴重な動画です。

神経を抜く 抜髄

年に数回あるかないかの抜髄。神経を抜くことです。できれば神経は抜きたくないのです。いわんや痛みの無い歯においてをや。

なのですがこの歯のむし歯を除去していたら神経が露出してしまいました。それでもこの神経の状態なら保存することは可能だったと思いますが、私は歯内療法専門医ではありませんからトータルで、つまりこの歯の被せ物をどうするかまで考えます。そこで出した結論は抜髄でした。色々な要素が絡み合うので語れば長くなります。もちろん患者さんの了解は取っています。

垂直性歯根破折

歯の根に縦にヒビが入ってしまうことを垂直性歯根破折と言います。Vertical Root Fracture 略してV.R.F.です。
基本的にはV.R.F.は抜歯の適応だと思っていますが、臨床的に無症状であった場合は患者さんのお気持ちを考えれば即抜歯とはなかなかいきません。考えられる限りの可能性を説明して一緒に治療方針を決めるという頼りにならない主治医となるわけです、私。

V.R.F.は近心根にありましたがレントゲン上では近心根に病変は無く、遠心根の病変の治療を行う過程で見つかりました。歯肉を剥離してみるとはっきりと破折線は見えますが、深い骨吸収はありません。骨のない部分(骨縁上)の破折線を削ってコンポジットレジンを充填しました。その後歯肉の安定を待ってクラウンを被せました。まったくの自己流の術式でエビデンスなんて全くありませんし、もしかしたらやってもやらなくても同じ治療行為だったのかも知れません。