歯頸部初期う蝕

歯の根元に近い部分を歯頸部(しけいぶ)といいます。下の画像の茶色くなっている部位はむし歯だったのですが、むし歯じゃ無いのにえぐれていることがあります。どんな理由でこの部分がへこむのかははっきりしていません。ずっと前は歯ブラシによる摩耗といわれたり、その後はアブフラクションといってエナメル質と象牙質の弾性の差によって起きるという説があったりしましたがどの説も現象を完全に説明しきれてはいないようです。原因がはっきりしないので対症療法しか手段はありません。このケースは若い方でむし歯ですので話は別です。

このケースならラバーダムは使用しなくても、と思わないでも無いし動画をよく見ると歯とラバーの間に歯肉が見えているので(ラバーダムシートに穴が開いている)完全なアイソレーション(分離)は達成できていないのですが、顕微鏡治療においては視野の確保が命ですので、面倒でも極力使うようにしています。なにしろ見やすさが全く違います。上の動画はラバーダムの効果もあって殆どミラーテクニックを使っていません。直接見られればそれに超したことはありません。自由になった左手を使えます。当院でのレジン治療でのラバーダム仕様率は90%くらいだと思います。根管治療では100%ですよ、勿論。

ダイレクトボンディングの窩洞形成

特にダイレクトボンディングの窩洞形成に限った話では無いのですが、とても高い確率で隣接面のう蝕を除去するとエナメル質のクラックが現れてきます。クラックが原因でむし歯になるのか、むし歯になってクラックが入るのかは、ちゃんとした文献を読んでないので私には解らないのですがとにかく多いです。裸眼ではたぶん見えません。クラックは可能なら削りとるようにしていますがあまり深いところまで達している場合は難しいです。

なお、このような切削は器具の先端が歯のどこに当たっているかを見ながらでなくては絶対にできません。どんなに歯科医師が身体を捻って覗き込んでもこのような部位を直接見ながら削ることは不可能です。したがってミラーに映してその像に対して治療をする(Working View)ことによってのみ実現します。顕微鏡使用以前の大前提です。ミラーの光学性能も重要で反射率の高い表面反射は当然として、メーカーによっても見え方が違います。マイクロスコープでの治療にはそれらの周辺機器が不可欠なのです。

動画の後半では削った縁になるべくデコボコが無いように特殊な器具で仕上げています。あまり明瞭な画像ではないですが、処置後は綺麗な線になっているのが見えると思います。上がbeforeで下がafterです。

こんな使い方を知ったのはネットの動画からです。惜しみなく情報を公開して下さる方々に感謝です。

インレイを外してダイレクトボンディング

隣り合った部分(隣接面)におよぶインレイはたいていの場合除去すると隣接面のセメントは漏洩して黒くなっています。動画にも写っていますが、その部分は器具を引っかけると簡単に外れます。最近のセメントだとそういうことは無いのかな? メタルインレーはもう10年以上やっていないので全く情報にアクセスしていません。当院で唯一行う金属修復はゴールドクラウンです。