コアの中のむし歯

なんだか匂うような気がするから外してみて欲しいというご希望です。変な味がするとか匂うような気がするという症状は診断が難しいです。歯の治療に介入するには症状の再現性が必要です。例えば冷たいものを食べるとしみるというケースなら歯に冷たいものをくっつければしみなければならないのです。咬むと痛いという症状があればそこで何かを咬んでもらって痛みがなければならないのです。匂いや味はこの再現が難しいのです。

そもそも治療してあった歯ですので外して被せ治してもほぼ新たな侵襲はありません。ですが治療費は発生します。「外して何ともなかったらゴメンナサイね」の承諾の下に着手する治療になってしまいます。

で、クラウンを外してみたらなんだか怪しい。はい、コアの下にはむし歯がありました。患者さんは「ほ〜ら先生、私の言ったとおりでしょ!」と嬉しそうにマウントを取ってくるのですが答えて私は「はい仰るとおりでございました」と嬉しい敗北を宣言するのでした。つまりこの歯は延命できたということなのです。

奥歯のセラミッククラウンとセラミックインレイの間に取り残されたセメント

修復物を歯に装着する際にはセメントと呼ばれる接着剤を使います。様々な種類のセメントがあるのですがセラミック系の修復物にはレジンセメントというものがよく使われます。これは優れた物性を持つのですが余剰部分を除去するのが非常に難しいのです。ですのでよく取り残されています。取り残しに気づかなかったのか取れなくて諦めたのかが知る由もありませんが・・・。
このケースでは結局はファイバーコアの除去用の超音波スケーラーダイヤモンドチップを使いました。闇雲に使うと歯を削ってしまうので細心の注意が必要です。とっても苦労して取り切りました。除去できる技術が無いなら使わないでほしい。

歯科治療は事前に全てを予測するのは難しい

こんなデジタルシミュレーションをしてみてクラウンを外してみたら歯肉の中にコア材がはみ出していて、それを除去したらコアの根元に気泡があったので気泡を追ってみたらどんどん内部で広がっていき、結局ファイバーコアを除去することになりすると内部が汚くて結局根管治療になってしまったという、事前に全てを予測するのは難しいというお話しです。