抜去歯は語る

抜去歯で根管治療の練習をよくしているのですが、ウェーブワンゴールドグライダーという最近発売になったニッケルチタンファイルでグライドパスの形成をしている途中で破折しました。すかさず破折ファイル除去の練習に移りましたが、やってみて何か変なのでレントゲンを撮ると理解できない映像です。

近心根から入っていたはずのファイルが遠心根から除去できました。除去は非常に簡単で数分で終わりました。

除去後にもう一度プログライダーを入れて撮影したところ。ウェーブワンゴールドグライダーではありません。

根尖孔から意図的に出しています。

根尖方向から水平にカットしていきます。

つまり折れてしまったウェーブワンゴールドグライダーは根尖孔手前で合流していた遠心根管に180度近く曲がってUターンするように登って行って折れていたわけです。練習ですから使用済みのファイルを使いましたが、未使用だったらどうなっていたのでしょうね? 流石に折れるとは思いますが・・・。

こういった曲がり方をするファイルは指でも簡単に曲がって真っ直ぐに戻りません。とても柔らかい材料でできています。何種類かあるのですが総じて第五世代のニッケルチタンファイルと呼ばれています(プログライダーは第六かも。良く解りません)。このファイルの根管への追従性を経験すると古い世代のニッケルチタンを使いたくなくなります。こうして当院の不良在庫が増えていくのです。

ストレートラインアクセス

根管の入り口を根管口というのですが、ここをどう攻略するかが根管治療には大切です。削りすぎること無く器具操作がし易い形にします。根管洗浄する際にも細すぎてはシリンジが入りません。

下顎7番。ピンクがかっているのはう蝕検知液を使ってむし歯を除去しているからです。感染根管です。

この歯の根管口を明示して器具が直線的に入るように形成したのが下の写真です。ストレートラインアクセスを確保した状態です。

どの歯でも抜髄症例では根管口は大体似たような形になりますが、再治療の場合は既にいじられているので綺麗な形にならないこともあります。

 

下の写真は下顎6番の近心根です。2根管口で根尖で繋がっていました。イスムスはよく洗浄して拡大はしませんでした。感染根管ではありません。

根充後。右に見える近心根の根充材が1本になっているように見えると思います。二次元のレントゲンですから実際には参考にはならないのですが…。
顕微鏡の写真からは根管口をとても大きく拡大しているように見えると思いますが、レントゲン写真を見るとそうでもないことが解ると思います。

抜髄

下顎6番の近心根です。根管口を拡大して根尖まで器具は到達しています。何か見えます。

赤い線で囲まれた部分です。歯髄です。神経を抜くことを「抜髄(ばつずい)」といいますが、綺麗にスポッと抜けてくるようなことはありません。顕微鏡で観察すると根の中には取り残しが見つかります。

特殊な器具で偶々綺麗に一塊で取れた、取り切れていなかった歯髄組織です。

見える範囲では綺麗になりました。

顕微鏡を使っても見えない部分は当然あります。でも見えない部分が少なくなるのは確かです。治療時間が長くなるのはその所為でもあります。