破折ファイル(その2)

このケースです。2回目のアポです。完全には違和感は消えておらず、今回はファイルの折れている根管にも着手することにしました。少し根管口外壁を削除するとほんの一部ですがファイルが見えました。これなら最低限の削除で済むと考えファイルを除去することにしました。ファイルが奥深いところで破折していると器具のヘッドが視界を遮ったり、少しの頭位の角度変化で見えなくなったりするので除去は難しくなります。

折れていたファイルはおそらくニッケルチタンファイルですが、こんなに短く折れているのは私は初めて見ました。根尖部で急激に湾曲しているのでそうなったのかも知れません。そういった部位では所謂Screw-in Effectが起きたときに破折しやすいので注意する必要があります。

通常はファイルが緩んだ後EDTAで根管を満たして振動を与えると飛び出してくるのですがそうなると小さくて見失ってしまいそうだったので、ある程度浮いたであろう時点で振動を与えるのをやめて特殊な器具で掻き上げました。その後長さを計ろうとピンセットで摘まんだらどこかに飛んで行ってしまいました(笑)。飛ぶ前のファイルがかろうじて動画には写っています。

この後プロルートMTAwhiteで根管充填しました。このようなケースはガッタパーチャは使いません。根管充填後は全ての違和感が消えて「全くなんでもない」とのことでした。

破折ファイル除去などの治療費が加算されて、このケースの根管治療のトータルの治療費は約20万円です。自由診療での根管治療の後、被せるのは保険というのは混合診療になるため認められませんから、被せものも保険外になります。医療機関が変わればその制約は受けませんから根管治療が終わった段階で転院すれば保険での治療も可能です。ただできればコア(土台)を入れるところまでは当院で済ませる方が良いと思います。

抜歯してインプラントにするより自分の歯を残すことに価値があると思える方の為の治療です。インプラントは歯がなくなってしまってからの治療のオプションで、そこに歯があるのですからその歯をなんとかして残そうという方が優先順位は高いと私は思うのです。

破折ファイル(その1)

破折ファイル(その1)

何ヶ月も治療に通っているのに痛みが止まらず来院された患者さんの下顎6番のケースです。

レントゲンを撮ると近心根に破折ファイルがあります。CTを撮影しました。ファイルの破折は医療ミスではありません。細心の注意を払っても起きうる事故です。ゼロにはできません。

抜歯の選択も含めて状況を説明したところ、根管治療を希望されたので着手しました。

ファイルは上の写真の二つ縦に並んでいる上側の根管の中にあります。ところが下に写っている根管に肉芽が見えました。赤いものが見えています。

根尖が破壊されており出血してきます。痛みの原因はこの根管のような気がします。だとしたらわざわざ破折ファイルを除去する必要は無いので、まずはこの根管をターゲットに治療することにしました。症状の消失が無ければ改めてファイルの除去をすることにします。

ファイルを除去せずに治療成果が出た場合の患者利益は二つあります。
一つ目は根管の削除を少なくできることです。除去の難易度はファイルが見えるか見えないかで大きく変わります。このケースでは根管を削除して可視化する必要があるのである程度の削除量は必要です。可視化できない破折ファイルは私には除去不能だと思います(未経験)。
そして二つ目は治療費を抑えることができるということです。といっても保険治療と比較すればずっと高額ですが当院では破折ファイルの除去は5万円をチャージしますのでその分のご負担は減るわけです。

結局このケースではファイルの除去を行うことになりましたが、その様子はまた後日アップします。

破折ファイル(その2)

XP-endo Shaperによるガッタパーチャ除去

非常に短時間で治療を終えることができました。トータルで50分程度です。同じ結果を出せるなら治療時間は短い方が良いに決まっています。ただしあくまでも「同じ結果を出せるなら」です。質を落として早く済ませるのとは全く違います。歯内療法の再治療の多くは、質の低い治療の結果として在ります。