その歯の痛みは本当に歯の所為?

針で刺されるような痛み 電気が走るような痛み 焼けるようなヒリヒリする痛み しびれの強い痛み 衣類が触れたり冷風に当たっただけで痛みが走る 痛みの部位の感覚が低下していたり、過敏になっていたりする

上記のような症状がある場合は「神経障害性疼痛」の可能性が高いです。したがって歯を治療しても痛みは治まりません。歯の治療は不可逆的なので治療の介入は確固とした診断の下に行われなければなりません。ごく特種な場合を除いて「取りあえずやってみましょう」は無いのです。

慢性疼痛

このケースです。

根管治療後二ヶ月経過です。完全に違和感が消えて何でも食べられるという所まではいっていないのですが、ご本人曰く「日常生活にそれほど支障は無い」ということですので次のステップに進むことにしました。
もちろんレントゲンで経過は確認しています。

治療に介入したころはかなり憔悴なさっていたのですが、今は笑いながらその頃を振り返ることができるようになって、歯のことばっかり考えているという生活からは脱却できたそうです。
治療時間の半分以上はお話をしていたように思います。痛みは多様な表現を持っていて、根管の中を診ているだけでは解決できないようなこともあるのです。とはいえ、基本的には歯内療法で解決可能なケースが私の守備範囲です。つまり歯が原因の痛みです。

治療後

咀嚼筋由来の歯痛(非歯原生歯痛)とパルピーター

非歯原生歯痛の原因のひとつに、筋・筋膜痛による歯痛/筋膜痛の関連痛としての歯痛があります。筋肉の痛みが歯の痛みとして現れるのです。従って歯の治療をしても痛みは消えません。
原因となる主な筋肉は咬筋と側頭筋です。
 
青い部分が側頭筋
青い部分が咬筋

検査はまず触診です。筋肉を1000グラムで圧迫しそれによって歯痛が再現されれば可能性は高くなります。そこをトリガーポイントといいます。パルピーターというこんな道具で圧迫します。

非歯原生と判断するのに重要なのは何かおかしいなと感じる歯科医の直感だと思います。そして何か手を下さないと報酬が無い保険制度に問題があるのですが、なんだか解らないのでレーザー当てておいたとか、解らないので取りあえずマウスピース作ってみたとかはどうかと思うわけです。治るのかも知れませんけど・・・

私が非歯原生歯痛について学ぶのはそれを治療するためではありません。筋膜痛以外にも非歯原生歯痛のパターンはいろいろあり、治療には薬物療法や認知行動療法などが必要なのですが当院でその対応は不可能です。つまり非歯原生歯痛の治療はできないのです。ではなぜ学ぶのかといえば、歯の所為で痛いわけではないのに誤って歯の治療に介入してしまわないためなのです。