スクリューポストを効率よく除去する

スクリューポストという根管の中に入れる心棒のような物があります。絶滅危惧種だと思います。上の画像のネジのようなモノがそれです。再根管治療をするにはこれを除去しなければなりません。

下の写真が今回のケース。見づらいですが中央付近にネジが入っています。左向きに湾曲している白いモノはサイナストラクトに挿入して原因の場所を探っているガッタパーチャです。ここに書いておきました。

根管内の人工物の除去は歯内療法には必ずと云って良いほど付き纏ってくる作業です。最も難しいのは破折ファイルです。スクリューポストの除去は難易度はそれ程高くはありません。とはいえ歯を削らずにピンだけ抜き取るにはそれなりのテクニックが必要です。

おそらくこの歯の根管治療はすでに二回行われていて、一回目で神経を抜いてスクリューポストを入れてクラウンを被せ、その後に再根管治療が行われていたようです。その際に行われた根管治療は近心根のみでスクリューポストは除去を断念していたようです。治療後は接着性の無いセメントで埋められていました。この類いのセメントは超音波チップではじき飛ばせるので楽です。スクリューポストはレジンで埋め込まれていましたが、これも専用のチップを当てて上手く除去することができました。

根の治療のやり直し

上が治療前で下が治療後です。根管充填はMTAです。そこそこ湾曲しているように見えますが、すでに大きく削られていたのでマイクロスコープ下では根尖孔までよく見えていました。

MTAは生体親和性が高いため根尖孔を超えて充填されても問題が無いとされています。むしろそれを推奨する専門医も多いです。

着手から根管充填まで2回の通院でトータルの治療時間は150分程度です。

根の先に膿がたまっている(根尖病変)

通常のレントゲン写真で見た根尖病変。

同じ部位をCTで見ます。病変を残酷に写し出します。日本の保険診療での根管治療の成功率は50%という説がありますが実際にはそんなに低くはないと思います。歯内療法のルールを全く無視した治療でも何の問題も無い経過をたどる「幸運」な歯はいくらでもあります。しかし歯内療法のルールを守った治療をすればこんなことにはならないというのもまた事実です。

ただし、再根管治療の場合は「幸運」の女神はそう簡単には舞い降りてきてはくれません。彼女は、根管の中のいくつもの難関をくぐり抜けた先に行きつけた者だけに微笑んでくれるのです。