神経がない歯の痛みの原因(その2)

このケースです。
神経のない歯の痛みの原因は概ね5種類です。おそらくこのケースでは感染と薬剤と機械的な刺激の複合的な原因です。感染はフィンの部分に残っていた汚れ。薬剤は貼薬剤として使われていた水酸化カルシウムの刺激。機械的な刺激とは治療の際の器具の根尖からの押し出し(治療の度に痛かったそうです)。

それらを取り除くことによって症状はほぼ改善しました。長期にわたる治療のため慢性痛に移行してしまっていましたから全くの無症状にはなってはいませんが、日常生活に支障は無いとのことでした。根管充填はもちろんMTAです。

仮歯が入りました。無駄にカラベリー結節とスチュワートグルーブ入れてみましたよ。

抜髄

上顎6番のむし歯の治療。

赤い部分がむし歯。青い部分は充填が行われています。

むし歯の部分。

むし歯を概ね削り取ったところ。

神経が透けて見えています。まだ完全にはむし歯の除去は終わっていません。神経は残せるものなら残すというのは当たり前のことです。上の方だけ除去して根の方の神経を残すということも今では特別な治療ではありません。しかしこのケースのように健全な歯質の量が極端に少なく、しかも歯肉の下まで感染歯質が広がっていた場合は折れてしまったり封鎖の問題だったりいろいろなリスクを抱え込むことになります。一方、イニシャルエンド(その歯にとって初めての歯内療法)の成功率は非常に高く、残り少ない歯質を残すより全体を被せた方が長持ちすることはあると考えます。神経の保存が最優先では無くて歯そのものの長期安定が大切なわけです。

歯肉を電気メスで切除して隔壁を築いてラバーダムを装着しました。

さらにむし歯の除去を続けると神経が露出しました。出血が殆ど無くかなり狭窄しており抜髄(神経を抜く)を選択。ここまでが時間が掛かります。治療開始前にそういった治療になる可能性についての説明は充分にしておかなければなりません。

散々いじり回された根管に比べて治療は簡単です。根尖に器具を到達させる(穿通 パテンシー)までは5分もあれば終わります。そこに至るまでが60分程度でした。

 

神経がない歯の痛みの原因

何度通っても、何ヶ月も通っても一向に良くならない痛みには何か原因があります。その原因を見つけて治療しなければ治る可能性は当然低くなります。それでも歯内療法には限界があり、100%の治癒を保証できるものではありません。更に非歯原性疼痛というものもあり(このケースは歯原性です)診断力はとても大切です。

というわけで、Oさん。先日の治療の動画のダイジェストですのでご覧ください。次回もX-Japanをガンガンに掛けてハードロックな治療をしましょう(笑)。当院は基本的に院内に複数の患者さんが居ることはありませんのでご遠慮なく。あ、でも演歌とかはお断りするかも知れません(汗)。動画のBGMもX-Japanでいきたいところでしたが、著作権でアウトになりますからそれっぽいのにしてみました。

どうぞお大事に。