レントゲン上では根の先に病変は見えません。歯周病なら歯周ポケットから排膿があることが普通ですが圧迫しても出てきません。CTを撮影すればもう少しわかると思います。
痛みは無いけれど膿が出る
痛くなったことはないのに歯茎から膿が出る。Asymptomatic irreversible pulpitis(無症候性不可逆性歯髄炎)からの歯髄壊死→感染根管という流れでしょうか。
CTを見ると大きな病変が確認できます。
通常の感染根管治療ではメタルポストやガッタパーチャや時には破折ファイルを除去したりしなければなりませんし、無駄に大きく削られてしまっていたりあらぬ方向に迷走していたりするのを修正したりと難易度は高いのですが、このケースでは根管は手つかずの状態ですので簡単です。難しい点があるとすれば壊死していく過程で歯髄腔が狭窄していることくらいでしょう。
というわけですが案外時間がかかってしまって根管治療に3回を要しました。近心根は根管口は二つありましたが根尖方向で合流していました。上部を削って繋げてしまえば治療は遙かにやりやすくなるのですが削れば強度は落ちますから敢えてそれはしないでその代わりに徹底的に洗浄を行っています。
通常感染根管治療ではMTA単味で根管充填を行っているのですがこのように根管がオリジナルの形態を残している場合にはバイオセラミックシーラーにシングルポイントで根管充填を行います。シーラーはEndoSequence BC Sealer という商品なのですがこれが非常に操作性が良くこれ一択というところです。ただ日本では売っていないのでアメリカから輸入する必要があるのと非常に高価なのが欠点と言えば欠点です。たぶん保険診療では使えない(金額の問題ではなく法的に)材料だと思います。
段階的にむし歯を除去して神経を残す ステップワイズエキスカベーション
ステップワイズエキスカベーション (Stepwise Excavation) とは、虫歯治療の一種で、虫歯の除去を段階的に行う方法です。一度にすべての虫歯を削るのではなく、神経に近い部分の虫歯の一部を残り、薬剤で蓋をして硬化を促します。その後、再び虫歯を取り除くことで、神経へのダメージを最小限に抑え、神経を残す確率を高める方法です。