見逃されていた根管

再根管治療の際に見逃されていた根管を発見することは良くあります。見逃されやすい根管は上顎大臼歯近心頬側第二根管(mb2)、下顎大臼歯遠心舌側根管(Radix Entomolaris)です。これらの根管はあると思って見なければ見つかりません。

メタルコアを削り取るのは大変です

この差し歯が不適合なので外してやり直すことになりました。メタルボンド(金属焼き付け陶材冠)です。てっきりメタルコア(金属の土台)が入っていてその上にメタルボンドを被せてあるものだと思いましたがなんと継続歯(土台一体型の差し歯)でした。通常はメタルポストは超音波チップをあてて簡単に外すことができるのですが全然外れません。しかもノンプレッシャスメタル(卑金属)です。非常に硬くてなかなか削れません。バー(ドリル)はすぐに切れなくなります。2時間近く掛かりました。歯を全く削らすにコアを外すのは誰でもできるものではありません。私はできますができればやりたくない😅。

治療回数を要したサイナストラクトがある大臼歯感染根管のイニシャルトリートメント

セラミックインレイで修復されていた下顎第一大臼歯です。数ヶ月前に痛んでその後しばらくして痛みは落ちついたものの歯茎が腫れたということで来院されました。レントゲンでも病変は確認でき、サイナストラクトもありますから診断は簡単です。神経が死んでいるのです。あとは何故死んだのかが問題なのですが治療に着手すれば明確になるはずです。

というわけでインレイを外します。接着はすでに破綻していました。外し終えるとピンポイントで歯髄腔が見えました。中は空洞です。おそらく深いむし歯を除去した際に露髄(神経が出てしまうこと)してそれに気づかなかったのだと思います。よほど注意しないと見えませんから・・・

さて、あとは除去するコアもないしガッタパーチャも入ってないしで、苦労するのは開口量が小さくて器具の入るスペースがないのと長時間の治療が苦手な方だということだけで、難易度はそう高くないだろうと思っていたらサイナストラクトが消えません。因みに殆どのケースでサイナストラクトはすぐ消えます。ところがこの歯は根管内が(見える限りでは)綺麗になっても反応しません。ならばと少し積極的に根尖を穿通してみましたが出血も排膿も全くないのです。困りました。あとはやれることは徹底的な洗浄だけです。ここでしばしば目にする悪手は削ることです。歯冠部も根管の中もさらには根尖孔まで削って破壊してしまうことです。更なる悪手はそれをアイソレーション(隔壁とかラバーダム)無しに行うことです。根管治療とは根管拡大することが目的ではありません。

というわけで洗浄を繰り返し5回目の治療時にサイナストラクトが消失したことを確認してすかさず根管充填を終えました。EndoSequence BC Sealerを用いたシングルコーンです。エンドシークエンスは高価なシーラーですが操作性は抜群です。再根管治療ではプロルートホワイトを使っていますがイニシャルの場合は根管形成が細いのでMTAシーラーにシングルコーンの根管充填が簡単確実で良いです。いろいろなMTAシーラーを使ってきましたがEndoSequence BC Sealerがいまのところ良いように思います。
大家といわれるような歯内療法専門医は殆どのケースをワンビジット、つまり1回の通院で治療を終えるのですが小心者の私にはそれは無理なのです。抜髄なら別ですが感染根管治療では痛みがあれば(なるべく)痛みが治まってから、排膿があれば(なるべく)止まってから、サイナストラクトがあれば(なるべく)消えてから根管充填を行っています。たぶんこれは今後も変わらないと思います。

追記
動画にナレーションを入れてみましたがなんだかチャラくなっちゃったので音声を消しての視聴をお奨めします😅