なんだか匂うような気がするから外してみて欲しいというご希望です。変な味がするとか匂うような気がするという症状は診断が難しいです。歯の治療に介入するには症状の再現性が必要です。例えば冷たいものを食べるとしみるというケースなら歯に冷たいものをくっつければしみなければならないのです。咬むと痛いという症状があればそこで何かを咬んでもらって痛みがなければならないのです。匂いや味はこの再現が難しいのです。
そもそも治療してあった歯ですので外して被せ治してもほぼ新たな侵襲はありません。ですが治療費は発生します。「外して何ともなかったらゴメンナサイね」の承諾の下に着手する治療になってしまいます。
で、クラウンを外してみたらなんだか怪しい。はい、コアの下にはむし歯がありました。患者さんは「ほ〜ら先生、私の言ったとおりでしょ!」と嬉しそうにマウントを取ってくるのですが答えて私は「はい仰るとおりでございました」と嬉しい敗北を宣言するのでした。つまりこの歯は延命できたということなのです。