入れ歯と保険

この写真は下の文章とは関係ありません。

歯の神経の穴とかデジタルスキャンとか、ヲタクで細かいことばっかり書いていますが、実は私は大学を卒業して総入れ歯の医局に5年ほど居ました。義歯の臨床は好きなんです。

さて、Sさんは他院にて12回も下の部分入れ歯の調整に通ったのに全く良くならないと仰って、「浮気してごめんね」と言いながら久しぶりに当院に来院されました。い、いや、Sさん、私のお袋と言っても良いお歳です(笑)。

入れ歯の調整の保険点数がどのくらいなのかもう忘れてしまいましたが、たぶん異常に低かった思います。もしかしたら再診料しか請求できないのかもしれません。前医には時間を掛けてちゃんとやれば解決できるのに、経営を考えると時間を割くことができないという大人の事情がきっとあったのです。

90分ほど時間を掛けて、義歯に沈下防止の装置を新たに追加して粘膜調整を使いました。数日後、Sさんは何でも噛めるようになりましたと喜んで、義歯治療をご希望のご友人ををご紹介くださり、その方に付き添って来院されました。たまたま上手くいっただけかもしれませんが、ちゃんと丁寧に治療して見合った報酬を受け取ってお互いに感謝しあうというのが理想的だと私は思います。

患者さんには保険での歯科治療を拒否するという権利があります。お店でそっちじゃなくてこっちの、高くても品質の良い方をくださいと買い物をするのとニュアンスとしては同じです。そこでお店選びが重要になるわけですが、これが難しく、ネットの情報なんて信用してはいけません。と、さんざん書いてる私が言うか(笑)。

11年経過のPFMブリッジと局部金属床義歯

上顎前歯にメタルボンドブリッジ。臼歯はパーシャルデンチャー。下顎は予後が読めなかったので治療に介入しませんでした。その後下顎の前歯(右下1番)を抜歯してレジンの歯を接着させてあります。

この度、義歯の歯が欠けてしまったので来院されました。上顎は安定しています。

セット時
セット時
11年経過 黄ばんでいるように見えますが写真の露出のせいです。セラミックは一切変色しません。
11年経過 拡大

決して良好なブラッシングではありませんが、上顎はあまりプラークが付いていません。従って歯肉の炎症もありません。セラミックはプラークが付きにくく歯肉に優しい材質です。高い精度で治療に介入することが結果的に長期に歯を守るということもあるのかもしれません。オーバートリートメントとの線引きはとても難しいので簡単に答えは出せませんが。

セット前のブリッジ

このように義歯とクラウンを併用する補綴治療ではメタルボンド(金属焼き付け陶材冠)を選択します。義歯のクラスプ(バネのような維持装置)との相性が良いのです。

10年を安定して経過したということは、まだまだ当分は安定した経過を送ると思われます。10年前の健康への投資が成功したということですね。めでたしめでたし(^^)。

総義歯(その6)

ここまできたら、この後決めなければならないのは上顎仲切歯の位置です。水平面をわかりやすくするために側切歯ぐらいまでは並べた方がベターです。ここまでは歯科医師の仕事です。そこが決まれば技工所サイドで歯を並べることができるようになります。奥歯の高さは模型上で決めることが可能なのです。

で、完成して装着したところまで話は一気に進みます。間に試適といって仮縫いのような作業をしてそこで見た目の確認をしています。見た目は結局はご本人が決めることで、歯科医師はそれをサポートするということになります。

上顎は口蓋部分に金属のプレートを使った金属床という構造で薄くて装着感に優れます。下顎は薄くする意味がありませんから補強として金属を使うことはありますが基本的にはレジン(プラスティック)です。このプラスティックに特殊な材料を使うことによって精密で強固な義歯を作ることができます。イボカップという加熱加圧精密重合システムです。

下顎粘膜面

プロフィール

このケースで治療費は約50万円です。

なお、木田歯科医院は4月から自由診療専門医院となります。保険での治療は行いません。