メタルボンドブリッジ(3 Incisor)

術前。左上2番の先天欠損と右上3番の欠損で、右上はブリッジが入っています。
前歯を綺麗にしたいというご希望です。

画像を加工して患者さんにイメージをつかんで頂きます。

通常犬歯と犬歯の間には4本の歯があるわけですが、ここに3本しかないために隙間ができています。少しずつ歯を大きくしてスペースを埋めます。上のシミュレーションの画像のようにダイレクトボンディングで治療することは可能ですが、はたしてこれが患者さんが望むカタチなのかどうかが問題です。この画像をお見せして考えて頂いた結果、患者さんは右上のブリッジまでやり直してメタルボンドで補綴するという方法を選択しました。ただし、2ヶ所の隙間を埋めるためにブリッジを再製し4本の歯を削るわけですから(そのうち2本は手付かずの歯です)、デメリットも十分説明し患者さんの意思決定をミスリードしないようにしなければなりません。当然デメリットがメリットを大きく上回る場合は希望されてもお断りします。
因みに下の前歯が重なって生えている場合に、1本抜いて矯正で並べる方法があるのですが、これをスリーインサイザー(3 Incisor)と言います。

仮歯を入れて患者さんの希望を聞き、試行錯誤で形態を決めていきます。その形をコピーして最終補綴物を作るわけです。唇との調和などは技工所では知り得ない情報ですから、仮歯の情報は貴重なのです。型を採った後は技工士さんの技術です。技工士さんの技術を引き出すためには精密な印象を渡さなければなりません。

セット直後。

 

約4年経過。犬歯の先が少し摩耗、あるいはチップしていますが全体として安定しています。おそらくメリットがデメリットを上回っていると思われます。

 

 

 

前歯のメタルボンドブリッジ

抜歯の後、歯肉の安定を待って・・・

麻酔をして・・・

ファイバーコアを1本立てて、圧排して概形成して・・・

欠損部の歯肉を電気メスで軽く切除して・・・

その凹みに仮歯を当てて・・・

ここまで約100分。この日の治療はここまで。

次のアポイント。

マイクロスコープの使用は治療時間の四分の一程度で、それ以外は4倍程度のルーペを使用しています。前回歯肉を切除した部位は良い形になっています。紫色の糸が圧排糸。この下に細い糸がもう一本入っています。

シリコン印象材で精密印象。

色合わせ。

この後噛み合わせを採って仮歯を修正して、参考用に仮歯の型を採って、エステティックマウントの作業をして90分。

以下は専門的なお話し
咬合高径を変化させないので、フェイスボウは理論的には必要ありません。大学卒業後の補綴の医局員時代に学んだ古い知識ですが、これは変わりようがないメカニカルな咬合(器)論です(たぶん)。下顎運動経路もアナログで計測する場合にはフェイスボウは必須ではありません。

カスタマイズドインサイザルガイドテーブル。

元、咬合ヲタクの私です。Peter Dawson L.D. Pankeyリスペクトです。

超音波チップによるマージン調整

超音波治療器というものがあります。歯石を取る時に水を出しながらチーチーいうあれです。この機械はタービンのような回転切削器具ほど切削力はないのですが、回転させる必要が無いので形態の自由度が高いのです(回転対称の必要が無い)。ありとあらゆる形があります。更に視界を邪魔しないで切削できるので顕微鏡治療には欠かせない機材です。

また、硬いものは削れるけれど柔らかいものには優しいという特徴があり、それゆえ歯石はとれても歯肉は傷つけないという使い方ができます。回転切削器具は相手が硬かろうが柔らかかろうが削れます。

これを使って歯肉の下の形成を修正している動画です。
再生スピードは4倍速です。音楽被せていますので音量にご注意ください。
BGMは無意味ですね。