超音波チップを使ったスクリューポスト除去

「コア」とか「ポスト」と呼ばれますが神経を抜いた後に根に入れる土台です。多くの場合、再治療はこれを外す必要があるのですがケースに応じて様々な方法を駆使します。重要なのは除去の際に歯を削らないことです。歯を削ってしまえばその後の歯の寿命を短くしてしまいます。そして強引な力を加えないこと。無理をすれば歯が割れてしまいます。

レントゲンに写っているのはスクリューポストというネジのようなモノです。そして今回の除去はポスト除去専用の超音波チップを使用する方法で行いました。こんなただの棒のようなチップがどうして効果があるのかよく解らないのですが、とにかくこれが良いです。何年か前にハンズオンの使用機材として購入したのですがもしかしたら日本では売っていないのかも知れません。もちろん問い合わせれば教えてくれると思いますが名前も知らないのです。

ご覧のように気持ちよく外れてくれます。闇雲に当ててもダメで下準備が必要なんですが、手放せない小道具の一つです。

ところで治療中に「あれ? スクリューポストって逆ネジだったっけ?」と思ったのです。つまり時計回しに回して抜けたのです。もう全く使わないですが私も大昔には使ったことがあって、時計回しで入れていたような記憶があるのです。で、動画を確認していて気づきました。これは鏡で写しているから逆なんですね。直視でもミラーで見ても自在に手は動くのですが(当然ミラー下では逆に写っています)、ネジの方向は脳の中で変換は行われていないようです。鏡に写った像の認識には色々不思議なことがあるようです。

ステップワイズエキスカベーション

深いむし歯を神経を抜かずに治療しました。むし歯を完全に削り取って露出した神経を保存するという方法もあるし、神経には極力触らずになんとかするという治療法もあります。非侵襲性歯髄覆罩とかステップワイズエキスカベーションとか呼ばれる後者のこの方法は、歯髄に近い軟化象牙質(むし歯)を取り切らずに薬剤を置いて軟化象牙質の硬化を期待するという治療法です。この方法にも欠点はありリエントリーと言って、数ヶ月後に再度詰め物を削り取って硬化していない象牙質を除去しなければなりません。その際に結局神経まで達してしまう可能性もあり、リエントリーの後には更に修復治療をする必要があります。

根管治療は難しいのでできることなら歯髄に触りたくないという意識が私の根底にあるので、抜随(神経を抜く)治療はなんとか避けたいのです。ですので、このところこのようなモラトリアム状態の歯を何本も抱えています。もちろん時間は掛かってしまいますが患者利益になると思っています。

そんな面倒くさいことをするんならスパッと神経抜いちゃってくんな、こちとら気が短けぇんだよべらぼうめ! と考える江戸っ子には向いてない方法ですね(笑)。

 

神経を抜いてから痛みが消えない

神経を抜いたら、それ以来痛みが引かない。当院の根管治療希望の患者さんは大抵このパターンです。どんなときでも重要なのは診査診断です。どうして痛いのか? 痛みの原因は本当に歯にあるのか? そこが解らなければ治療のしようがありません。問診は原因を探る大きなヒントになりますから時間を掛けて行います。

レントゲンです。ラバーダム無しの抜随だそうですし仮封(フタ)もプアなので感染はしているのでしょうが、病変は認められず歯根膜腔も正常範囲にあるように見えます。

とまあ、死ぬほど長文なブログになってしまいそうなのでちゃちゃっと端折りますが、根管は上顎小臼歯に多い2根管口で根尖方向で繋がっているタイプで、その上部のイスムスに壊死した歯髄が残っており、根尖部は解剖学的形態が壊れていました。歯冠部の歯質は殆どなくなっており根管も大きく拡大されています。長期にわたる根管治療ではありがちですが治療の度に拡大するとこうなってしまいます。当院での切削はこのイスムスを拡大しただけで、メインで行ったのは徹底した根管洗浄です。貼薬剤が刺激になって歯根膜に炎症を起こして痛みが出ている可能性があるので根管貼薬は一切行っていません。

一回目の治療は感染歯質の除去と隔壁作り。二回目で根管内を綺麗にして三回目でMTAで根管充填しました。慢性痛に移行しているのですぐに痛みが引くということはないと思います。歯冠方向からの感染を防ぐ為にこの後レジンコアを入れて経過観察に移行しました。やれることはやったので、後は患者さんの痛みに寄り添っていきます。良くなりますように・・・

結果はこちら。