超音波チップによるマージン調整

超音波治療器というものがあります。歯石を取る時に水を出しながらチーチーいうあれです。この機械はタービンのような回転切削器具ほど切削力はないのですが、回転させる必要が無いので形態の自由度が高いのです(回転対称の必要が無い)。ありとあらゆる形があります。更に視界を邪魔しないで切削できるので顕微鏡治療には欠かせない機材です。

また、硬いものは削れるけれど柔らかいものには優しいという特徴があり、それゆえ歯石はとれても歯肉は傷つけないという使い方ができます。回転切削器具は相手が硬かろうが柔らかかろうが削れます。

これを使って歯肉の下の形成を修正している動画です。
再生スピードは4倍速です。音楽被せていますので音量にご注意ください。
BGMは無意味ですね。

 

 

 

ダイレクトボンディング

ダイレクトボンディングでまん中の隙間を埋めた症例です。
通院回数は2回。1回目で型を採って治療用の治具のようなものを作り、2回目でレジンを盛り上げていきます。2回目の治療時間は100分程度です。
歯は全く削っていません。それが最大の利点。欠点は経年的に継ぎ目が着色したり変色したりすることです。
もし外れても元に戻るだけです。歯科治療には珍しい可逆的な治療なのです。若くてむし歯の無いこの歯を隙間を埋めるために削ってしまうのは、私の治療の選択肢にはありません。
むし歯ではありませんから、この治療は保険では認められていません。保険外の自由診療です。この症例では約8万円です。

術前

術後

専門的にはもう少し上部鼓形空隙を大きく取った方が良かったかも知れませんが、まあ歯医者の自己満足でしょう。ほぼ全ての患者さんが、治療を終えて鏡を見た時あまりの変化にビックリされます。

歯肉縁下から立ち上げることでブラックトライアングルを消すのですが、この方のように歯間乳頭にボリュームがあると、左右から押し気味に充填することによって、その形態を変えることができます。逆にここが凹んでいるとこのような形にするのは大変難しくなります。歯肉を剥離して充填したくなります。そのような術式は寡聞にして存じませんが現時点ではたぶん無いと思います。いずれ出てくる術式だと予言しておきましょう。

使用したコンポジットレジンはグラディアダイレクトその他。カラーはAO2、AO3、A2、E3、CVTを使用しました。バッキングにオペーク色を使い、暗い口腔内を透過させないようにします。

必須ではないと思いますが、治療に拡大鏡やマイクロスコープはあったほうが良いと思います。けっこう難しいんですよ。

非歯原生疼痛

先日受講したセミナーのレポートがありました。
こちらです。

これはマイクロスコープを臨床に導入した頃に治療した症例です。多くの患者さんは他院での治療で改善しないという理由で当院に来院されます。この方も抜髄根充後も疼痛が続くので色々調べて来院されました。歯科治療に対する知識も深く治療の説明も良く理解して下さいました。

術前

術中

根充後

歯内療法によるトラブルは大抵の場合は1〜2回の治療で改善するのですが、この症例では良くなったようでもまた痛み出すことがあるという経過を辿ります。結局スッキリ何の違和感もないというところまでは持って行けず、しかしそれなりに安定したという状況で補綴を終えました。治療回数は5回程度だったと記憶しています。根管治療はいたずらに治療回数を重ねても効果はありません。引っ越しされて、1年程度の経過後に来院されましたがほぼ安定していました。

その頃はまだ非歯原性疼痛に関しての情報は今ほどはなく、私自身も殆ど知識がありませんでしたので簡単にその可能性をお話しして歯科治療を開始しましたが、問診の記憶から、今にして思えばこれは非歯原性疼痛だったように思います。だとしたら治療のファーストチョイスは薬物療法であり、私にできることは専門医の紹介だったのです。

因みに薬物療法には抗うつ薬が使われることがありますが、これはうつ病に対して処方されるのではなく、抗うつ薬が、痛みを伝える神経伝達部位に作用して効果を発揮するからです。その点については誤解されませんように。
とはいえ、当院は院内処方ですので抗うつ薬を持ち合わせていません。また、一般的な歯科医院で抗うつ薬の処方が可能かどうかも解りません。

歯科は殆どの場合診断は全くもって容易なのですが、希にこのようなことがあるのです。先日、別の講習会で歯内療法専門医にその質問をしてみたところ、痛みが引かない根管治療の3割程度(確実な記憶ではありません)はオロフェイシャルペイン、つまり口腔顔面痛だったという答えが返ってきました。歯内療法専門医院ではトラブルをもつ患者さんが殆どでしょうから、一般的な歯科医院よりその確率は高いだろうとは想像していましたが、驚くべき数字でした。傾向として痛みを長期にわたって我慢していた歯髄炎と、外傷による歯髄炎の場合にオロフェイシャルペインに移行する場合が多いような気がするとのお話しでした。

因みに昨日も下顎総義歯の患者さんが、義歯が当たって痛いということで来院されましたが、痛みの原因は三叉神経痛か帯状疱疹後神経痛の可能性が高くその旨ご説明しました。「電気が走るような痛み」は三叉神経痛の特徴的な症状です。また皮膚に触れただけで痛いのは(アロデニアと言います)帯状疱疹後神経痛の症状のひとつです。
義歯が当たって痛いという場合は、咬めば痛いという確実な症状の再現性があります。