MTA根管充填

当院で行う根管治療はその殆どが治療のやり直しです。根管治療はやり直しの方が難易度は遙かに高くなります。根管の中に汚い物が一杯詰まっているのでまずはそれを取り除く必要があるのですが、これが難易度を上げる第一の理由です。詰まっている代表がガッタパーチャというゴムのようなモノです。これが本当に取れません。ここでやってしまうのはガリガリ暴力的に盲目的に削るというやり方です。動画に写っている器具につけて回しているドリルのようなものは一切歯がついておらず、したがって歯は削れません。このケースではその後レッジというこれもやっかいな所をクリアして根の先にアプローチします。

 

その後は徹底的に洗浄を行いMTAで根管充填を行います。下の動画は編集ソフトで手ぶれ補正をかけてみたのですがコンニャク現象といわれている揺らぎが出てしまっています。作ってる側としては気になるのですが、見ている方は気にしないで下さい。

B.O.P.T.

ヘッケルの反復説というのをご存じでしょうか? 「個体発生は系統発生を繰り返す」という文系の人間を魅了してやまない進化論の学説です。正しいかどうかは別として単純にシビれます。

「歯肉の形態はDNAによって決まるのではなく、歯牙の形態によって決まる」
どうですか? 文系の私はこういったシンプルで広がった表現にとても弱いのです。というわけで言葉の美しさがきっかけでこの勉強を始めました。まんざら嘘でもありません。

被せた当初は良かったのに徐々に歯肉が下がって境目が露出してしまう、ということを無くすことができます。また不揃いの歯肉の位置を手術無しに揃えることが可能になります。要するに綺麗で長持ちとするいうことです。
日本ではまだあまり知られているテクニックではありませんが、特にヨーロッパではこの方法がごく普通に大学教育で行われるようになっているそうです。つまり巷間に見かけるエセ民間療法のようなものではないということで、これは医療にとっては非常に重要なことです。

セミナーはごくごく少人数の受講者で開催され、疑問点をその場でリアルタイムで質問できるというまるでプライベートレッスンのような非常に贅沢な時間を過ごすことができました。理論を学ぶ座学が昨日で終わり少し期間をおいて次回からは実習が始まります。全く新しい概念なのでトレーニングを今からしておきます。この人の出番です(笑)。

サイナストラクトと歯根破折

歯肉にできたニキビのような膨らみ。サイナストラクトといいます。以前はフィステルと呼ばれていました。神経を抜いた後の管(根管)の中の細菌が骨の中に漏れ出て膿がたまり骨を融かして歯肉を突き破って出てきている状態です。根管治療をしない限り治ることはありません。サイナストラクトは原因の歯に繋がっているのでまずはそれを確認します。このケースでは間違えることはまずあり得ませんが、神経を抜いた歯が何本かある場合には必ず行わなければなりません。

赤く塗ったのがそうです。サイナストラクトからガッタパーチャポイントという造影性のあるゴムのような物を差し込んでレントゲン撮影をするのです。これで原因の歯を特定できたので治療説明を行い治療に介入することの意思決定が行われればステップを進めます。

被っていたジルコニアクラウンを除去してCTを撮影します。外さない状態でも撮影は可能ですがX線を通さない物は可能な限り除去しておいた方が画像にノイズが乗らないのです。

上の二次元のレントゲンでは明確には見えなかった病変がはっきり確認できます。おそらくパーフォレーションがありレッジがあります。前医は善意を持って一生懸命治療をしていたのはレントゲン写真からヒシヒシと伝わってくるのですが残念ながらなすべきことを根本的に間違っているという不幸です。

最近よく思うのですがレジンのコアは白ではなくて何らかの色を付けて欲しいと思います。歯と同色だと除去が難しいのです。ある程度取れたところで残念ながら歯根の破折を確認しました。サイナストラクトの位置などからある程度予測はしていましたが確定診断は今回は破折線が確認できるまではつきませんでした。しかし抜歯するという意思決定はこの破折線によって迷うことなく行うことができました。この時点でその日の治療は終了し次回は抜歯となります。

治療に介入するには正当性が必要でむし歯に関しても全てのケースで治療する必要はありません。抜歯となれば尚更のことで事を急いてはいけません。