下顎7番近親根の歯根端切除術

下顎7番近親根の根尖病変。サイナストラクトがあります。

赤丸の部分が病変です。
近親根に根充材が2本見えますが、1本はサイナストラクトから挿入して病変の位置を確認しているガッタパーチャーポイントです。6番が原因ののサイナストラクトの可能性もあったので確認しました。この頃はまだCTの導入前でした。

 

通院に何時間もかけての遠方からの患者さんなので、いたずらに治療回数を重ねることなく2回目の治療でMTAで根管充填しました。

しかし違和感は消えず、サイナストラクトが再発します。抜歯かエンドサージェリーしかありません。選択したのは今にして思えば無謀なのですが、エンドサージェリーでした。マイクロエンドサージェリーではありません。ルーペは使いますがレトロテクニックです。いざ始めてみるととてもマイクロスコープ下で施術できるようなテクニックを私は持ち合わせていなかったわけです。

 

術後3年。根尖を完全にはカットできていないかも知れません。それでもサイナストラクトは消失し、骨も再生しているように見えます。違和感も全くないそうです。感染部位は除去できていたということなのでしょうか。マイクロエンドサージェリーではそこを拡大して確認します。下の写真です。

このステップを踏まない歯根端切除で感染部を除去できたのは幸運だっただけです。たまたま保存できたから良かったのですが、専門的な講習も受けずにやっても殆ど失敗に終わるでしょう。その後専門医のトレーニングを受けましたが、それでも簡単な症例から少しずつステップアップして行く必要がある難しい治療です。実習を受けた程度でできるようになったとは思わないで下さいと、その際何度もインストラクターに念を押されました。あまりに難しい治療(主に部位に左右されます)は専門医に紹介するのがベストです。私もそうします。

さて、一般的には第二大臼歯の外科は意図的再植術が選択されます。この方は下顎がやや前突しており尚かつこの部位の頬側の骨が厚くなかったのでやりました。そしてなにより「先生がやってダメならあきらめます」と言って頂ける関係があったので踏み切りました。信頼に甘えてはいけないし、信頼に応える努力を続けなければならないと思わされた思い出深い症例です。救われたのは私だったというわけですね。